第23話
体中の力が抜けて動けないわたしに、水の入ったグラスを渡して鳴翔が隣に座る。
「もし、俺との子供ができたらどうする?」
思わず口に含んだ水を吹きかけたが、むせながらもなんとか飲み込む。
「何言ってんの⁉︎まさか、ずっと付けないでシテたわけじゃないよね」
「いや、さすがにそれはない。俺ももう子供じゃないし、そこはわかってるつもり」
飲み終わって空になったグラスに気付いた鳴翔に「もう1杯いる?」と聞かれたが、首を横に振ってグラスをテーブルに置いた。
「俺が言いたいのは麗名が思ってるようなことじゃなくて、その…」
いつもとは違う鳴翔に違和感を感じつつ、なんとか体を起こしてソファに座る。
やはり年齢には逆らえないようで、昔に比べて腰の痛みがすぐに引かないし体力も落ちていた。
「――旦那とは別れて、将来的には俺と結婚してほしい」
らしくない真剣な顔で話す鳴翔を見るのは、高校生の頃以来だろうか。
帰り道、いつもの6人で電車に乗って高校から少し離れた海に行き、水をかけ合ってはしゃぐ4人を鳴翔と2人で砂浜に座って眺めていた時。ふいに手を握られて横を見ると、今みたいな真剣な顔をした鳴翔がいて。そこで告白されてわたし達は付き合うようになった。
今はもう遠い、昔の記憶だ。
「今のこのセフレみたいな関係じゃ我慢できなくなった。俺は知っての通りクズだし、お前の旦那に劣るとこばっかだけど。でも…!やっぱどうしようもないくらい麗名のことが好きなんだよ!!」
久しぶりにこんなに真正面から想いをぶつけられて、どんな反応をすればいいかと戸惑う。
普段あまり感情的にならない鳴翔のこの姿は少し意外だった。
Sinful Love 〜愛に飢えた女達〜 七瀬みちる @nanase_michilu5
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