第8話

 最初に集まったお店での1次会が終わり、2次会ももうすぐお開きにしようかと話している時、輪君からメッセージが届いた。

『いつぐらいに終わりそう?終わる時は言ってね。迎えに行くから』

ついこの前までだったら、ごく当たり前のいつも通りのメッセージだったはずなのに。今は凄く不愉快に感じる。

なにそれ、自分が“夫婦”を壊したくせに。何事もなかったかのようにしてきて、無神経にもほどがある。

「麗名ー、麗名も3次会行く?駅前の1000円で飲み放題のとこ。あそこちょっと気になってたんだよね〜」

どうしようかと迷っていた時、ふとこの間の千晶さんの言葉を思い出した。

『パーッと遊んできちゃいなよ』

パーッと…ねえ。家に帰ってやらなきゃいけないことがあるわけでもないし。

「じゃあ、行こう…かな」

スマホの画面を閉じて肩に掛けているバッグにしまい、友達の問いに応じた。

2次会で帰る人達と別れ、皆軽く酔った状態で色も音も騒がしいお店が並ぶ道を、ゾロゾロと移動する。

 集団の後ろからその風景を見て、文化祭の打ち上げで先生が貸し切ってくれたお店で打ち上げをしてから、カラオケで朝まで歌ったあの日を思い出した。まさか朝までなんて思っていなかった先生には、次の日学校で凄く怒られたんだっけ。「一応皆両親に許可を得ての行動でしたー」なんて言って全然反省してなかったけど。ほんと、若かったんだよね。何もかもが。なんでもできると思っていたし、事実やりたいと思ったことは大抵できた。

今思うと、まだ輪君に出会う前のあの頃が、わたしの人生で実は1番楽しかった時期なのかもしれない。「ウチらが世界一!」なんて言って、毎日馬鹿みたいに騒いで笑って遊んで。部活には入っていなかったから、友達と寄り道しながら帰って。そういえば、帰るのが遅くなりすぎて怒られたこともあったな。授業を抜け出して屋上でサボるのも結構好きだった。

思い出して少し笑っていると、隣にいた奈々と目が合う。

「随分と楽しそうだね」

「ちょっと、高校生の時のことを思い出してて」

そう答えると、奈々は「そっか」と言って安心したように顔をほころばせた。

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