第7話

 奈々含め同じテーブルに集まっていた全員が、私と輪君の間で何が起こったのか気になって、お互いに目配せをし合っている。

いくら仲がよくても、こういう話題はさすがに気まずいよね…。

そんな沈黙を明るい声で破ったのは奈々だった。

「麗名と輪君に何があったのかは知らないけど!せっかく皆久々に集まったんだからさ、今は忘れていっぱい飲もうよ!!」

そう言うと、わたしにテーブルに置いてあったカシスオレンジのグラスを「麗名は最初いつもこれでしょ?」と差し出す。それを受け取ると、奈々は高校生の頃とさほど変わらない若々しい笑顔で笑った。

「あと、お金払った分食べて飲まなきゃ勿体ないじゃん!主婦は大変なんだから」

少し的外れな発言に皆が一斉に吹き出す。

こういう場の雰囲気を明るく作ってくれていたのはいつも奈々だ。輪君のこともあって、“変化”というものが少し怖くなっていた。しかも、後輩の沙保ちゃんにまで裏切られるような形で。きっと…人との関係なんて、ほんの少しのことですぐに変わっちゃうんじゃないかって思っていた。

実を言うと、卒業してから変わったであろう皆に会うのも少しだけ怖くて気後れしていた。でも皆高校生の頃のまま変わっていなくて…。たったそれだけのことだけど、すごく救われた気持ちがした。

楽しむ場に、こういう負の感情は持ち込んじゃだめだよね。

輪君とのことを一時的に忘れるように、ふぅと息を吐いてグラスに口をつける。

「てか、麗名が変わってなさすぎて怖い…!昨日久しぶりに卒アル見てたんだけど、本当にそのままの姿なの!!」

豪快にジョッキの中のビールを飲み干した奈々が、声を荒げてわたしの顔をジーッと見つめる。

わたしは目を逸らした。

「それは言い過ぎでしょ…」

「いやっ、本当のことなんだって!!」

皆とワイワイ話すこの雰囲気が懐かしくて、自然と笑みがこぼれた。

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