第6話

 同窓会当日、わたしは久しぶりに輪君とまともな会話をした。

「…今日、同窓会だっけ?」

「うん」

会話と言っても、わたしは必要最低限の言葉でそっけなく返すだけだけど。

輪君は気まずそうに、わたしの顔の斜め下あたりを見ている。拳を握りしめて、何か言いたそうにしているようだった。

「何?もう行きたいんだけど」

集合時間の10分前くらいには着いていたいから、そろそろ家を出なければいけない時間だ。

「そんな服、持ってたっけ」

上はアイボリーのブラウスでスカート部分はネイビーの軽い素材のワンピースに、ウエスト部分にベルトが着いている。この服は、去年の誕生日に輪君がプレゼントしてくれた物だった。

そんなことも覚えていないくらい、わたしに興味がなかったんだね。

「今そんなこと話してる時間ないの。もういいよね、急いでるから」

わたしは突き放すように言ってリビングを出ると、ドアを静かに閉めた。

「いってらっしゃい…」

そんな声が後ろから聞こえたけど、聞こえなかったふりをしてパンプスのストラップを留めた。


 会場に着いたわたしは、高校時代仲のよかった友達を探す。

「おーい、麗名!こっちこっち〜」

 1つのテーブルに毎日一緒にいた、私を入れて男女6人のメンバーが座っていた。その中でわたしを見つけて手を振っているのは、中学の頃から友達の清水奈々しみずななだ。ちなみに、今は結婚して宮添みやぞえ奈々になった。

「遅かったじゃ〜ん!時間見間違えた?」

「お前変わってなさすぎ!本当に同い年かよ」

 あの頃から変わっていない皆を見て、少しホッとする。

「それがさぁ、家出る直前に旦那に話しかけられて。それで遅くなっちゃった」

 そう言うと、皆は目を見開き固まった。

「え、ちょっと待ってね?旦那って輪君だよね!?あのラブラブだった…」

わたしはなんとなく気まずくて「まあ、ね」と言って奈々の隣に座った。

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