第3話
ランチを食べ終わり、少し話してからお店を出た。既に14時をまわっていることもあり、外はとても暑かった。
「―ねえ、麗名ちゃんの旦那さん今日は休日出勤って言ってたんだよね?」
「うん、なんか急ぎのプロジェクトがあるらしくて。朝早くに出てったよ」
「じゃあ…あれは誰?」
夜宵さんが指差す方を見ると、旦那である
「え――…」
一瞬だけ見えた隣の女性の顔。あれは、沙保ちゃんだ。それに、こだわりだという明るい茶髪の内巻きボブ。ここ数年毎日見てきた後輩の姿を、見間違えるはずはない。
でも、じゃあ昨日ショッピングに誘ったのはなんで!?
状況を理解するのに、数秒の時間がかかった。
あれは、わたしが予定があって断るのをわかった上で聞いていた、カモフラージュみたいな物だったってこと…?
「麗名ちゃん、麗名ちゃん!」
千晶さんに肩を強く揺すられ、我に返る。
「一旦落ち着こうか。うちなら今誰もいないから」
夜宵さんに促され、ほぼ無意識のまま歩き出す。
さっき食べたランチの味はもう忘れていた。
「はい、ダージリンティー。リラックス効果があるから」
夜宵さんがティーカップを順番にわたし達の前に置いていく。わたしはそのティーカップを口まで持っていき、一口だけ飲む。
「麗名ちゃん、ちょっと落ち着いた…?」
心配そうに千晶さんが顔を覗き込んだ。
「まあ…まだ信じられないけど」
わたしは「あはは…」と苦笑いをし、手元のティーカップに視線を落とした。
何かがここから変わり始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます