第4話

 夕方になり、玄関からいつも通りの「ただいま」という声が聞こえてくる。

「おかえり、輪君」

玄関まで歩いて行き、輪君から鞄とスーツのジャケットを受け取る。

ちゃんと、会社に行っていたんだよね…?

お昼過ぎに見たあの光景が、わたしはまだ信じられないでいる。人違いだったんじゃないかと、見間違えだったんじゃないかと、そう思っていた。

「…?」

ジャケットをハンガーに掛けていると、ポケットの中の輪君のスマホにメッセージが届いた。

「輪君、これ―…」

その時見えてしまった。メッセージの内容が。

『今日も楽しかった!』

すると、すぐにスマホの画面に次のメッセージの通知がくる。

『いつまで滝川さんと夫婦でいる気なの!?』

『あんなおばさん、早く捨てて私と結婚してよ!次も楽しみにしてるからね♡』

『大好きだよ♡おやすみ』

あれは見間違えじゃなかった。信じたくないのに、こんなメッセージを見てしまったらもう信じざるを得ない。

画面に表示されている名前は、もちろん沙保ちゃんの名だった。

「麗名ありがと…」

スマホを受け取った輪君が、画面を見て驚いたような顔をした後、青ざめた顔でわたしを見た。

「なんか…見た?」

そんなふうに青い顔になってまで聞くくらいなら、最初からやらなければいいものを。

「―見たくなかったよ」

輪君が今どんな顔をしているのか、もう気になることもない。

この時、わたしの輪君への信頼は、0だった。

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