第17話
驚いているのは由佳ちゃんも同じらしく、眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。
「夜宵さんの旦那さんって、その…お固くて気難しくて、不倫とか絶対に許さない人だと思ってました」
確かに。たまにすれ違った時に挨拶しても軽く会釈されるだけだし、夜宵さん達が家族4人で出かけているところもほとんど見かけない。基本無表情で静かな人という印象だった。
「あの人はね、ただ家族に無関心なだけなの」
感情のこもっていない声で夜宵さんが言う。ひどく寂しい目をしていた。
「長女の
一息で話した後、「仕事にしか興味が無いの、多分」と付け足した。
普段は、あまり自分や家族のことを話さない夜宵さんが家族の話をするのを新鮮に感じる。でもその話している時の表情が感情のない人形のようで少し怖かった。
「…なんか、私の話ばっかしちゃってごめんね」
夜宵さんはいつもの優しい笑顔に戻ると、申し訳なさそうに言った。
「あたしさ、不倫のことは知ってたけど相手がどんな人かは知らないな〜」
食べ終えたフォークをお皿に丁寧に置いて、千晶さんが言う。千晶さんはさっきからずっと面白そうに笑っていた。
「今日は千晶ちゃんのために集まったんでしょ」
夜宵さんが話を戻そうとするが、その程度で食い下がるはずがなく、すぐに切り返される。
何度かそのやりとりを繰り返した後、結局夜宵さんが折れて話すことになった。
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