第15話

 秘密を暴露なんて、普段言わないようなことをお酒を飲んでもいないのに言うということは、それだけショックだったということなんだろう。こんなに躍起になっている千晶さんを見るのは初めてだった。

「秘密といえば、麗名ちゃん同窓会どうだった?私達何も聞いてないんだけど、実は何かあったんじゃないの〜?」

「いや、べつに隠してたわけじゃなくて…!」

言ってから気付いた。これでは何かあったと言っているようなものだ。

 千晶さんがそれを聞いて面白そうにニヤニヤしている。

完全に乗せられた。

「何かあったんですね!?」

由佳ちゃんまで興味津々に前のめりで聞いてくる。夜宵さんも心なしかワクワクしているようだった。

「その、元彼と酔った勢いで…まあ」

「襲われたの?」

「ホテル?家?」

「まさか外ですか!?」

「もっと詳しく!」

あまりに迫ってくるものだから、一瞬たじろぐ。

この感じ。前にもあったような気がする。

ああ、あれだ。初体験した次の日、友達に質問攻めにされた時のやつだ。

「お酒飲みすぎて元彼に介抱してもらって、そのまま元彼の家で…シた」

なんだか改めて口にすると変な感じがする。ずっと居座り続ける気持ち悪さと、久々に恋バナをしているみたいな気恥ずかしさ。その2つが混ざったこの感情をどう表現すればいいのかわからない。

「どうだった?不倫をするってのは」

フルーツタルトをフォークでつつきながら千晶さんが言う。2杯目のカフェオレは残りが半分ほどになっていた。

「どんな質問ですか…」

わたしはザッハトルテを1口頬張る。濃厚なチョコレートが魅力のケーキで、わたしが1番好きなケーキでもあった。

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