Lucifer

 僕は三つ葉のドアを開いた。

 なかは最初の部屋とほぼ同じ構造だった。

 正方形、清楚な純白の壁紙、シャンデリア、フローリングの床。


 さきほどの部屋とは違い、扉はいま僕が入ってきたところしかなく、ほかの三方向はただの壁だけだった。

 つまりは、突き当りだ。


 引き返そうとした矢先、ふと、向かって左側の壁にらくがきが書かれているのを見つけた。


 S A T A N


 英語力が決して高いとはいえない僕だが、それが「悪魔」を意味する言葉だということは分かった。

 黒い絵の具が使われていると最初は思ったのだが、目を凝らすと赤が混じっているようだった。

 その色は僕を不安にさせた。それは赤くて、黒く、そしてどこか脂ぎっている。この画材の真相について、考えれば考えるほど恐ろしい考えが頭をよぎっていく。


 血……。

 まさか。

 しかし、僕の心はとめどなく妄想の輪を広げていくのだった。


 ……もと来た部屋に引き返すとしよう。


・もと来た部屋にもどる。

https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085373259578

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