Mephistopheles

 ダイヤのドアを開いた。

 なかは最初の部屋とほぼ同じ構造だった。

 正方形。清楚な純白の壁紙、シャンデリア、フローリングの床。


 違うのは扉の数だ。ここには北側と南側に扉があり、正面つまり西側は壁になっていた。


 バタン。部屋に両足を踏み入れたとき、背後で音がした。振り返ると、ドアが閉ざされていた。


「おい! 誰だ 開けろ!」

 バンバンとドアを打ちすえた。

 扉は締め切らなかったはずだ。

 風もないのに、ひとりでに閉まるわけがない。誰かが作為を持って閉ざしたに決まっている!

 誰かがこの扉の向こうにいるのだ!


 ドアを叩きつづけ、叫びつづけ、やがて疲れ果てて僕はドアにもたれた。ワークシャツもカーゴパンツも汗にまみれていた。

 この鋼鉄のように固いドアをやぶるのは人間業には不可能だ。


 冷静に考えると、ただ単に鍵のかかるトラップがされていたということなのかもしれない。

 どちらにしても、完全に道は閉ざされているわけではない。

 南北にそれぞれ扉がある。


「どこかに移動しなきゃ」

 僕は立ち上がった。

 北の扉は白色。南の扉は赤色だった。



・北の扉

https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085382730739


・南の扉

https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085382672585

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