Astaroth

 白い扉を僕は開いた。

 そこはやはり正方形の部屋で、天井からはシャンデリアが下がっていた。

 向かって三方にドアはない。

 どんづまりだ。

 道を間違えたようだ。

 引き返そうと思ったとき、正面の壁に飾られていたものに目がとまった。


 あれは……盾?

 まるで中世の騎士が身につけているような金属製の盾がそこにあった。

 大きさは、縦70cm、横50cmと言ったところ。

 ただ、歴史画でみるような何かのシンボルが描かれているわけではなく、全面が無地だった。

 セラミック合金を思わせる質感があり、シャンデリアの明かりを反射してきらめいている。表面は鏡のように僕の扁平へんぺいな顔をおぼろげに映し出していた。

 指先でつつくと確かなかたさを感じた。


 手の届く高さにあったので、僕は留め金から盾を外し、手に取った。裏側には握り手があり、それは黒革におおわれていた。

 盾の裏側には文字が書かれていた。


 ANGEL


 僕でも意味が分かる。天使……。文字の意味は分かる。だが、それが記されている意味がわからない。

 とにかく、それがいいお守りにもなると思って、僕は持っていくことにした。

 このさき何があるか分からない。

 このようなものでも持って入れば、身を守る道具になるかもしれない。


 さきほどの部屋へと戻った。

 向かって左手の部屋は閉ざされている。右手は壁だ。それなら正面の赤い扉を開けて直進するしかない。



・赤い扉を開ける。

https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085391191955

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