Lilith
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https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085391191955
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おそるおそる扉を開く。
あんな悪魔に襲われるのはもうゴメンだ。
慎重にあたりを見渡す。
そのせいで、驚愕のあまり僕は悲鳴を上げるところだった。
そこに人間がいると思ったからである。
だが、それは人ではなかった。壁に飾られた肖像画だった。
安全を確かめてから、部屋のなかへと立ち入った。
肖像画は、かなり大きく、そこに描かれた人物は等身大と言えるような大きさであった。
白髪の老婆が描かれていた。
意思の強そうなまなざし。ひきしまった口元。
年のころ六十ぐらいで、身なりはよく、
絵は古く、表面には
画風も時代がかっていて、この人物が西洋人なのか日本人なのか、判別しがたかった。
古い時代の洋画に影響を受けた作品にありがちな画風で、明治・大正時代に描かれたと僕は見積もった。それを裏付けるように、絵の右端には署名がかきつけてった。
明治30年4月21日
何者なのだろう?
きっとこの屋敷の主人であったに違いない。
あの赤い部屋にいた悪魔となにか関係があるのか?
どちらにしろ、彼女から直接その話を聞き出すことはかなわなそうだ。
向かって右手――つまりは東の方向に扉があった。茶色い扉だった。
僕は真鍮のドアに手をかけた。
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