Incubus
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https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085432364250
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ドアを抜けた先には長い廊下があり、そこをさらに進むと、屋敷のエントランスと思しき場所があり、そとの日光が差し込んでくるのが見えた。
出口だ。
いよいよ外に出られる。
エントランスは
それにしても、あの老婆は一体何なんだ?
ここまで、歩いてくる途中僕の脳裏には二文字の言葉がよぎった――悪魔と。
エントランスホールには外に面した大きなガラス扉があった。
剣を打ちつけると、ガラス扉には僕が通り抜けられるくらいの大穴があいた。
屋敷の外は暴力的なまでの自然でみちあふていた。みだりに枝を伸ばす樹木。腰の高さまで伸びた草。
エントランスの外の道はアスファルトが荒廃していて、雑草に侵食されている。
アスファルトのえぐれたところに泥がたまっていて、そこにはタイヤのあとが残っていた。
見れば、バイパス道には車が止まっていた。トヨタのセダンタイプ。
自動車のそばには、真新しいタバコの吸殻が落ちていた。
吸い口に、ピンク色の口紅のあとがついていた。
運転席に女が乗っていた。髪の長い、肩を出したレザーワンピースの女。
ホテルであった女だ。
怒りが湧いてきた。
あいつが僕をこんな目にあわせたのだ。
僕と目が合うと、女は後ろに向けて急発進した。
「待て!」
僕は怒鳴りつけた。
車は遠ざかっていく。
それから手に持っていたものの存在を思い出し、車に向かって投げつけた。
鋭い剣先が、前輪のタイヤに突き刺さった。
途端に車の態勢が大きく前方に傾斜する。
女は驚いた顔で僕に視線を向けてきた。
運転席まで接近すると、僕は運転席のサイドガラスを殴りつけた。何度も。何度も。キャアアアーッ。運転席の女が悲鳴を上げた。
窓ガラスはやがて粉々の破片と変わり、僕は運転席へと手を差し込んで、女の首根っこをつかんだ。
「お前! お前! どうして僕をここまで連れてきたんだ!」
僕の声は
ぎりり……手に力が込もる。
「あんたが……あんたが心配になって戻ってきたのよ」
女はぜいぜいと言った。
「僕が心配だというのか? なぜこんなことをした!」
「知らなかったの……こんなやばいところだって。でも金払いがよかったからつい引き受けちゃって」
「ふざけんなよ!」
つい力が入りすぎたのかも知れない。
ぐきっと嫌な音がした。
女はだらしなく首をたれ、白目を向いた。
「お、お前……」
興奮して加減を忘れてしまった。
僕はひとりの人間を殺してしまったのだ……。
ミシ……。
どこかから地鳴りが響いてきた。
あの老婆はまだこの屋敷のなかで生きている。
こうしては突っ立っているわけにはいられない。
荒れ果てた道を、僕は走り出した。
死んだ女を置いて。
END
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