悪魔の棲む部屋【インタラクティブ・ホラー・ノベル】
馬村 ありん
はじめから読む
女性の叫ぶような声が聞こえて、僕は目がさめた。悲鳴が本当に聞こえたのか、あるいはそれが夢の残響なのか、僕にはわからなかった。
ここはどこだ……?
見慣れぬ部屋に僕は横たわっていた。
品のよさを感じる白い壁。天井から下がったシャンデリア。ワックスのほどこされたフローリングの床。洋風のお屋敷といった風情である。
部屋の広さは、二十畳程度。正方形で、四方それぞれに扉があった。
なかは空気が停滞しているのか、どことなく息苦しさを感じた。
どうして僕はここにいるんだ……?
記憶を呼び起こそうと努める。だが、あたまは霧がかかったかのようにぼんやりとしていた。まるで睡眠薬を飲んで目覚めた朝のような心地だ……。
思い出せるかぎり、最後に僕がいたのは、県内にあるモーテルの一室だった。
そこで女の子と待ち合わせをした。
マッチングアプリで知り合った女の子で、大人としてわりきったお付き合いをする目的で連絡を取り合ったのだ。
彼女は現れた。シャンブレーのジャケットに、赤いレザーのワンピース。
僕たちは簡単な自己紹介をすませ、さっそくことに及ぶことにした。彼女の名前は忘れた。おそらく偽名だろうし、覚えていても仕方ないからだ。
準備があると、彼女はバスルームに消えた。僕は待った。それから、黒い上下の下着を肌につけ、長い髪をなびかせて、彼女が姿をあらわした。魅力的なほほえみがその端正な顔に花開いた。
これから起こることへの期待に胸をふくらませながら、僕は彼女をベッドへと導いた。
ふたりでベッドに横たわり、僕たちは見つめ合った。
僕の指が彼女のブラジャーのひもに手をかけた瞬間、背中に隠されていた彼女の手が、僕の首筋へと伸びてきた。うすぐらい明かりの中で僕は目にした――にぶい銀色に光る注射針を。
すぐに意識が途切れた。
あの女の子に僕はここへと連れてこられたということか……?
なんのために?
どうして……?
とにかく、こうしては居られない。
ここから抜け出して、家に帰らなくては……。
僕は立ち上がった。
※
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