Beelzebub
・選択肢に戻る
https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085373259578
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僕はハートのドアを開いた。
さきほどの部屋と違って、部屋のなかはうすぐらかった。
シャンデリアが、ばちばちと音を立てて、明滅している。
そのとぼしい明かりは、部屋全体を照らし出すには足りず、部屋の奥行きが分からないほどだった。
明滅する光に目を凝らしながら、僕は部屋を歩く。
床の上に、一冊の本が置かれているのに気がついた。
それを目にしたとき、ぼくの背中を悪寒が走り抜けてきた。
本は、見開きB3ぐらいの大きさで、黄ばんだページからはずいぶんと年季が感じられた。
僕の気持ちをかき乱したのは、その装丁だ。なにか動物の皮をなめしているのだが、その質感がなにかごく見慣れた動物を連想させたのだ――そう人間という動物に。
それでも、説明のできない好奇心にかられた僕は本を手に取り、中身をひもとこうとした。
Book of Eibon
タイトルにはこうあった。
本……Eibonの本……?
どういう意味なのだろうか?
いまいち英語は得意ではない。
僕はページをめくった。
中身は僕の知らない言語で記されていた。英語でもなければ、かといって中国語でもなかった。
だが、挿絵があったので、どのような趣向の本なのかは伝わってきた。
吐き気を催した。
そこには、エジプトの壁画を思わせる人物画が描かれているのだが、彼らが人間の首や両手足を切断したり、腹の中身を暴いたりする様子が描かれていた。
そして、また別の人物が人間から血を採取したり、臓物をガラス瓶におさめる姿もまたあった。
僕は本を閉じ、元あった場所においた。
こんな気持ちの悪い本が置かれているなんて、まともな場所じゃない。
なんとか逃げ道を探さなくては。
その時だ。
声が聞こえた。
女の声だ。
僕の名前を読んでいる。
「誰だ!」
声のする方へと僕は叫んだ。
――こっちへ来なさい。
声は言った。
僕は闇の向こうへと立ち入る前に足を止める。
直感が告げている。
この先には何かがあると。
なにかよくないものが。
僕は……。
・それでも先へ進んだ。
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・元きた部屋へと引き返した。
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