Erlik

 白い扉を僕は開いた。

 そこはやはり正方形の部屋で、天井からはシャンデリアが下がっていた。

 向かって三方にドアはない。

 つまり、行き止まりだ。


 道を間違えたようだ。

 引き返そうと思ったとき、正面の壁に飾られていたものに目がとまった。


 あれは……盾?

 まるで中世の騎士が身につけているような金属製の剣がそこにあった。

 ただ、歴史画でみるような風合いの剣ではない。それはセラミック合金を思わせる質感があり、シャンデリアの明かりを反射してきらめいていた。表面は鏡のようで、僕の扁平へんぺいな顔をおぼろげに映し出していた。

 指先でつつくと確かなかたさを感じた。

 刃渡は一メートル半はあった。


 手の届く高さにあり、僕は留め金から剣を外し、手に取った。握り手は黒革におおわれていた。

 両刃の剣で、片面には銘が打ってあった。


 ANGEL


 さすがに僕でも意味が分かる。天使……。ただ、それが記されている理由はわからない。


 とにかく、これはいいお守りにもなる。僕は持っていくことにした。

 このさき何があるか分からない。

 それに、剣を手にしていると不思議と勇気がわいてくる。



・ひとつ前の部屋に戻る。

https://kakuyomu.jp/works/16818093085371501586/episodes/16818093085431489146

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