第5、6話 実技試験後
目が覚めると俺はベッドの上で寝ていた。
「ここはどこだ・・・・・・俺は死んだのか・・・・・・」
ガラガラした声を上げる。
「何寝ぼけてるの?貴方は魔力が尽きて剣魔学園の治療室で寝ているの」
横に顔をゆっくり向けると今日戦った銀髪の女が座っていた。
「アリス・・・何だっけ」
俺は隣に座っている女の名前をすっかり忘れてしまっていた。
「失礼な奴ね。アリス・グロリダよ」
拗ねたように銀髪の女は言った。
「お前本当にアリス・グロリダか?こんなに美人だったか?」
戦っている時はあんまり顔を見ていなかったが、近くで見ると体型はスリムで、顔は美人としか言いようがないくらいに整っている。見惚れてしまうほどの美貌だ。
「喜べばいいのかわからないじゃない!ここは剣魔学園の治療室、入学もしてないんだから起きてお礼言ってすぐに出て行くわよ!」
アリスは頬を赤らめてそう言った。
「ちょっとまて、俺は病人だぞ!体が痛むんだからそんなに強く手を引っ張るな!」
アリスと病人になっている俺の手首を強く掴み、引っ張るようにして校門まででる。
「にしてもお前強かったな」
素直に褒めた。
「私にはアリスって名前があるの!お前じゃなくてアリスって呼んで?」
少し怒り口調でそう言った。
「わかったわかった。アリスの魔法の威力には驚かされたよ」
「あなたも魔法の出力は低いのに、よくあそこまで接戦したのは素直に褒めてあげる。それに私の生み出した魔法を斬った時はびっくりしたんだから」
「あれは偶然だよ。俺も斬れるとは思っていなかったし、あそこまで上手く剣に魔力を注ぎ込めることができるとは思っていなかった」
「普通は剣に魔力は通せても、魔力が拡散してしまってあそこまで器用に多くの魔力は注げない。それが偶然とでも?」
アリスは褒めるように言う。
「そうなのか?まあ多分偶然だよ」
俺はよくわからなかったので曖昧な返事をした。
「そろそろ日が沈む時間だからお別れね」
「そうだな、入学できたらまた話そう、約束だからな」
寂しそうな顔をしていたので俺はそう言った。試合には負けてしまい、試験官に魅せることができたかは自分でもよくわからない。
別れを告げ、俺は宿に戻った。
明日には受験番号が校門前に張り出されるので朝早く起きるためにも食事を摂ってすぐに再び寝た。
次の日、朝の六時に今日は起きた。合格発表まであと1時間はある。張り出されている間はいつでも見ることができるのであまり焦らない。
剣は折れてしまい使い物にならなくなったので、今だけ魔法オンリーだ。下の階に降りて宿の食事をゆっくり楽しんでいると時間になった。
「そろそろ紙が張り出される時間・・・か」
一度宿の借りている部屋に戻り、簡単な準備を済ませて外に出る。剣魔学園に向かう途中、直前までなかった不安が込み上げてくる。
剣魔学園に無事に着くと、校門前には人混みが出来ている。どうやらもう受験合格番号が張り出されているみたいだ。
俺は人混みを掻き分けながら受験番号を確認する。
俺の受験番号は134685。張り出されている紙には134468、134562、134685と書かれている。
心の中でガッツポーズをした。嬉しすぎて今ここで叫びたいくらいだ。
「受かって良かったねハルト!」
聞き覚えのある声が隣から聞こえる。何で俺の合格を俺よりも喜んでいるんだと聞こうとしたがやめた。
「アリスか・・・君は受かってるんだろ?」
分かっているようにアリスに問いかける。
「当たり前でしょ!」
アリスはずっと笑顔だ。
「アリスは闘技の部、次席か・・・本当に凄いな」
あんな強さを見せられたら次席なのもわかる。超超超超羨ましい。でも首席ではないのはなぜだろう。
「首席はエイタ・ブリングス、なんか聞いたことがあるような・・・アリス誰だか知らないか?」顔を右に向けアリスに問う。
「クリス・ブリングス侯爵の子息よ」
「あーなんか聞いたことあるような気がしたんだよ。俺は貴族に疎いからそこら辺が全くわからないんだ。」
「ちなみに私も侯爵家の令嬢よ?」
「ええっ!そうだったのか?今更ですが敬語に直した方が良いでしょうか?」
俺は自分の地位を考え、焦ったように敬語に治す。
「今更遅くないかな?まあ私はそう言うのは気にしないから大丈夫。今変えられても逆に困るわ」
「アリスが気にしないならいっか!」
そう言って再びタメ口に戻す。そこから2人で長らく話して、また入学式に話そうと言ってお別れをした。
俺は一度家に報告に戻る。
家に戻ると合格祈願と書かれた木の板が何十枚も壁に貼り付けられていた。俺そんなに合格できないように見える?と思った。
「ハルト合格おめでとう!!でも合格したからって浮かれんなよ?これからも辛い事があるだろうが負けるな、父親が言えるセリフはこれくらいだ!」
かっこいい父親を演じたかったのだろう。まあ無視したが。
母親は嬉しさの余り、号泣していて話にならなかった。
「この家に戻ってくる機会は少なくなるけど、俺頑張ってくるからな!」
「ああ、頑張ってこい!」
そう言って親は俺を見送った。
これで親への報告は終わり、入学式に備えて再び帝都に戻るのだった。
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