第11話 ダンジョン

 パーティを組んでから3日が経った。


「今からダンジョン実習を始める!!!その前に一つだけ、死ぬな!。今年のダンジョンは10階層まで。ダンジョンは3日間実施する。一日で10階層の地に足を踏み入れてもいい、だが初めてのダンジョンだ、油断をすれば死ぬと考えろ。授業でも行ってある通り、深く潜るほど魔物の強さは上がっていき、10階層には中級の魔物が出現する。ダンジョン内で休む時は休憩を仲間内で回しながら摂るんだぞ?それでは始め!」


 そう言って教師なしのダンジョン実習が幕を開けと、俺らが一番だ!と言って三人組で調子に乗っている奴もいた。


 今回に関しては危険となるのは10階層の中級魔物だ。


「俺達はどうする?3日間あるからゆっくり行ってもいいが、二人は早く行きたいか?」


「私は急ぐ理由はないからゆっくりでもいいのだけれど・・・シン君はどう?」


「俺も体力を残しながらゆっくり行きたいな」


「わかった。それと、ダンジョンに入る前に確認しておこう。魔物がいるかどうかは常に探索魔法で確認しながら動く事。探索に引っかかったらすぐに報告する事。それぐらいだ。」


「わかったわ」 


「了解」


「よし、ダンジョンに入るぞ」


 ダンジョンに入ると真っ直ぐに広がる一本道に出た。ダンジョンは明かりがあまり無いため、魔法で光を付けながら歩く。一本道に出て5分ほど歩いた。周りの景色は何も変わらない。


「ここら辺にはまだ魔物はいないみたいね。全力で探索魔法の範囲を広げているけど魔物の気配は一切しないわ」


「ちなみにアリスの魔力では何mほど探索が可能なんだ?」

 

 俺はアリスに聞いた。俺の魔力では50mが探索範囲だ。


「確かに気になるな・・・アリスの魔力は人並みを外れている。それなら必然的に探索範囲も広いはず。」


 シンが呟く。


「110mくらいかな?何となくで使っているからあまり気にしていなかったの」


 俺はいつものことなので驚かない。


「110!?ハルトは剣士でもあり数値が低いのは仕方ないかもしれないけど、俺に関しては魔法使いで90m。なんか俺がちっぽけに見えるな・・・」


 シンでが落ち込み易くなっている。疲労が溜まっているんだろう。このダンジョンで三人とも何かを見出せれば良いんだがな・・・


 2階層に入る一本道を進んでいると三通りの分かれ道がある。


「これはどっちに行けばいいんだ?」


「わからないけど、とりあえず一番右に行ってみない?」


「俺もそれで良いぜ」


「意見は一致だな。右側ルートを行ってみよう」


 進んでいるとアリスが歩みを止めて報告をした。


「敵が探索魔法に引っかかったわ。敵は110m先、7匹何かがいるわね。あんまり気配は強く無いわ。」

 

 近づくと、段々と気配が強くなっていく。姿が見えた。


「居たわ。コバルトね。魔物としての強さは下だけど、毒を持っているから気をつけて」


「ああ、わかってる。」


「俺が戦ってみても良いか?実は俺は魔物と戦った事があまり無いんだ。これから二人についていくには戦いに慣れないと行けないから。」


「もちろん良いが。あまり派手にやり過ぎるなよ?音と匂いを嗅ぎつけてゴブリンが大量に来るからな」


「出来るだけやり過ぎないように頑張ってみるよ」


 コバルトが自分達に気づいたのか、体の向きを変える。


「フガッ、フガッ、キィィィ」


 コバルトは毒爪を当てようと、腕を振り回しながらシンに後先考えず正面から凸ってくる。


「大地よ 凍てつけ!」 


 ゴバルトは爪を当てないといけない為、近くに行かなければならない。シンは魔法使いなので近距離戦には向いていない。なので大地を凍らせ、敵の足を止めて向かい撃つ。


「炎よ 燃え盛れ!」


 一発の大きな火の球を三つ放つ。ゴバルトくらいであるならば3発で十分だ。


「ブギィ、ブギィ、ブギィィィィ」


「すまん、ゴブリンえぐいほど呼んでしまったみたいだ・・・」


 咆哮が近づいてくるのが聞こえてくる。


「流石にやり過ぎたと言えど数多くないか?」


「ダンジョン外なら多いかもしれないけど、ダンジョン内だから日常茶飯よ」


「そうなの・・・か?だからって20体は多くないか?」


 振り向くと自分達が来た道から20体のゴブリンが続々と俺たちを囲むように出てくる。


「俺は7体ならすぐに殺れるぞっ」

 

 ハルトは身体強化で飛んで来た矢を華麗に避けながら言う。


「私は8体殺るよっ」

 

 アリスも同じく飛んで来た矢に当たらないように風魔法などで飛びながら避ける。


「じゃあ俺は5体だなっ」

 

 シンは正面から剣を持って突っ走ってくるゴブリンを相手にしながら言う。 


 ロロから教わった身体強化の継続は普通に走るより2倍は速く、視力を強化し、相手の行動を素早く察知し、対処に移る。


 矢を持っているゴブリンは3体、剣を持つゴブリンは4体。


「風よ 吹き裂け」


 いくつもの風の刃がゴブリンに向かって飛んでいく。


 ゴブリンはその風を捉える事ができても避けることはできない。


 得意な風魔法で手前の剣を持つゴブリンの腹辺りを深く切り裂く。


 囲まれたら面倒なので、一度引いてまた前進。


「今ので大体3匹か。もっと鍛錬しないとなぁ」


 身体強化を継続的に使いながら魔法を同時に発動させる事は成功したが、案外疲れる。


 次は剣の番だ。まずは走る。いつもと同じ感覚ではない為、少し違和感はあるが弓を構えたゴブリンは予想外の速さで迫りくる俺に耳を立て驚いていた。


「ブギィ」


 ゴブリンは3体同時に構えた弓の矢を放ち、またすぐに弓を構え直す。


「ゴブリンはどうしてこんなに頭が良いんだよっ!」


 そう言いながら良くして視力で矢を一本一本斬りつける。


 そこからは近いゴブリンから首を落とす。


「これで俺の役目は一旦終わりか」


「アリスも終わったか?」


 そう言いながら目をアリス側に向けると、そこには灰になったゴブリンの死体が8体分転がっていた。地面が大きくえぐれている。どうやら1発でやったみたいだ。


「それは流石にやり過ぎなように見えるんだが・・・」

 灰とかしたゴブリンの悲惨な光景を目の当たりにし、心底同情してしまう。


「シンもそろそろ終わったか?」


「ちょうど終わったよ。やっぱりまだまだ鍛錬しねぇとな。火魔法はまだしも、雷魔法と氷魔法がまだ上手く調節できねぇ」


「それはこれから伸ばして行けば良いさ、時間はあるんだから・・・」


「時間はまだ昼の1時頃、今は2階層、実習が始まったのが10時頃だ。今日の内にあと3階層は進もう」


 また同じような道を行く。先に行った人達が手当たり次第に魔物を殺しているせいであまり居ない。


 5階層についた頃にはゴブリンを討伐してから4時間経っていた。


 テントを張り、夕飯を済ませ、明日に向けての準備をしていると午後の9時になっていた。


「ゆっくり気ままに来たから体力は残っていると思うが、これから先は魔物の強さも上がる。今日は交代制でゆっくり休もう。まずは俺が見張りをするから休んでくれ。」


 二人は寝れているだろうかと思いテントの方を向く。


 テントからアリスが抜け出そうとしているのが見えた。


「アリス?どこに行こうとしてるんだ?」


 アリスは気づかれたことにビクッとしながら恥ずかしそうにしながら答える。


「ちょっとお花を摘みに行こうとしただけよ・・・」


「もしかして言うのが恥ずかしくてずっと我慢してたのか!?」


 そう言えば俺とシンは定期的にトイレを済ませていたが、アリスだけは一度も行っていない。


「なんか、ごめん。明日からは我慢せずに、ちゃんと言ってくれ・・・よ?」


「わかった・・・わ・・・」


 二人は気まずそうにしながら一日目を終えた。

































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