第12話 2日目

 朝の5時になった。


「2人ともそろそろ起きろ!」


「なんだぁ?飯の時間?」

 

 シンは半起きの状態で目を擦りながら言った。


「まだ寝てたいなぁ」

 

 アリスに関しては起き上がってもいなく、まだ寝ぼけている。


 寝起の2人に俺は声を大きく張り上げて言う。


「2人とも?一度でも見張り役したか?してないだろ?つまりどう言うことかわかるよな?」


 シンとアリスは体を震わせながら声を合わせて言う。


「ごめんなさい!」


 俺は疲労が限界まで溜まり、倒れるように寝に入った。


「流石に寝過ぎたね、私達。」


「ダンジョンに居る事忘れてガッツリ寝てしまった・・・大分悪いことをしたな。」


 シンとアリスは反省をする。


「この調子じゃハルトは4時間は起きないな。どうする?」


「んー・・・どうしようかな。朝食の準備と10階層までの地図の把握でもしてよっか・・・」


 そう言ってシンは朝食の準備、アリスは10階層までの地図を覚え始め、4時間経った頃、ハルトは寝転がったまま眠そうにしながら目を開ける。


 開けると目の前に眠ったアリスがいた。


「んん?見間違えか?えっ?アリス!?なんで隣で寝てるんだよ!それに早く服着ろ!」

 

 テントの中で1人で寝ていたはずだ。なのに起きたらアリスが白色の下着一枚で寝ている。


 下着の下には薄らとピンクのブラが広がっていた。


「んぅ?ハルトやっと起きたぁぁぁ」


 脇がチラリと見える形に腕を上げ、大きくあくびをする。


「ハルトがなかなか起きないから暇になって隣で寝てんだ。ここまでスキンシップ多い奴なんてなかなかいない。俺は見てないからしっかり目に焼き付けとけよ!」


 シンはテントの外から言った。


「なんのことだよ!まあいいけど・・・」


 そんなことがありながら3人で朝食を済ませてテントを畳む。


「2日目スタートだ。色々あって時間は予定より遅くなっている。なるべく早く10階層に行こう。」


「ここが6階層か」


 風景は5階層とは少し違く、壁が少し赤い色をしている。中には透明の魔晶石か輝き、辺りが見える灯りを出していた。


「魔物の死体が多いね。みんな先に殺っちゃったのかな?」


 アリスが平然としながら呟く。


「そうだろうな、みんな今頃、9階か10階にいるんじゃないのか?」


「早えぇなぁ、俺たちもペースを上げようぜ」


 ゴブリン、コバルト、ブラックラビットを殺しながら3時間で10階層手前まで到達した。


「次は10階層だ。一年の実習で唯一、中級生物がでる。探索魔法はこまめに使い、気を引き締めていくぞ。」


「わかったわ!」


「了解だ!」


 魔物の気配が強く感じてくるまで時間は掛からなかった。


「中級ブラッドスパイダーが2体よ!捉えようと腹下から放出してくる糸には猛毒が巡らされているから注意して。捕まると猛毒をかけられた死ぬまで血を吸われるわ!ハルトの場合は糸を絶対に斬らないで、糸中を巡っている毒が溢れ出して触れるだけで危険だから火魔法で燃やして対処して!」


 アリスが探索魔法に引っかかったタイミングですぐに報告し始める。


「分かったぞ!」


「俺はどうすればいい!」

 シンがアリスに向かって叫ぶ。


「シン君は得意な火魔法でハルトが近づけるように援護して!」


「わかった!」


 走っていると壁に黒い影が現れ、地面に降りてくる。さっき話していたブラッドスパイダーだ。


 俺達を見つけるや稲や即敵視し、糸を放ってくる。


 身体強化を施しているから糸はそこまで早く感じない。だけど数が多すぎる。近づこうとするとそれを拒むように幾万もの糸が通る隙間なく張り巡らされる。シンと火魔法のタイミングを合わせ糸と毒を同時に燃やし、糸を突破する。あと13m!


 再び糸が迫り来る。


「燃え盛れよ!」


 次は糸が集い固まる前に火魔法で燃やす。


「ここだっ!」


 スパイダーの首を斬り落とすと、紫色の血飛沫が周りに飛び散る。俺は剣にへばり付いた血を振り払う。


 隣で戦っていたアリスを見ると大きなため息をついている。


 アリスは戦ったスパイダーの糸を火魔法で燃やし尽くし、氷魔法で体を全て囲うようスパイダーを凍てつくして動きを止めている。


 締めに火魔法を放って氷こど消しとばしていた。


「次が来たわ!レッドウルフよ!」

 アリスが気づいてすぐに報告する。


 俺とシンでは感知できない距離なので、とても役に立つ。


 スパイダーの糸は高値で売買できる。スパイダーの糸を回収し終え、すぐ次の戦いに向けて準備をする。


「ヴァン!ヴァン!」


 鳴き声が近づいてくる。


 出てきたのはレッドウルフ4体。


「レッドウルフは速さと連携が取り柄だ!魔法使いは剣士無しに接近戦をしてはダメだ!だからハルト、前線を任せたぞ!」


 シンは戦い方を知ってるかのように、注意事項を言いあげる。


 レッドウルフは俺達の周りを回りながら1匹飛び出して攻撃をしてくる。反撃をしようとすると元いた場所に戻り、また周回し始める。


 ここで魔道具の出番だ。


 ウルフが駆ける軌道上に、触れた瞬間縄が触れたものを拘束するトラップを配置する。


「ヴァンゥゥゥゥ」


 縄の痛みに魔物は鳴く。


「引っかかったぞ!仕留めてくれ!」


「わかったわ!凍えて 潰れろ!」

 氷魔法を放ち仕留める。


「ヴァン!」


 鳴き声を最後に4匹の中の一匹が死する。

 死んだ事により続いていた連携が崩壊する。


 ウルフの走る軌道はバラバラになり、飛び出して噛みついてくるタイミングは被ったり攻撃にすら来なかったり、もう色々と雑になっている。


「一気に仕留めるぞ!風の刃よ 吹き荒れよ!」 


 風魔法でウルフ2匹を同時に切り裂く。


「燃え盛れよ!」


 もう1匹はシンがトドメを刺した。



「ふぅ、連戦で大分疲れたな、もう遅い時間だし、そろそろ休もう」


「そうね、そろそろ休みたいかも・・・」


「俺は飯の準備をするから少し待っていてくれ」


 そう言ってシンはさっき討伐したウルフの肉を解体し始める。


「え、アレ食えるのか?」


「ちゃんと調理すれば食べれるよ」


 シンは肉を解体して持参の鍋に入れ始める。


「そ、そうか・・・」


 俺は少し躊躇いがある返事で返す。


 アリスが不自然な挙動をするので聞いてみる。


「アリス?何か居るのか?」


 アリスは何も言わずに、不自然な挙動を繰り返す。


 花のいい香りが漂ってくる。俺達の料理には花なんか微塵も使用していないのに。それと同時にアリスが11階層に向かって走り出す。


「アリス!そっちは11階層だぞ!止まれ!シン、アリスを追いかける。お前もついてきてくれ!」


「どうした!?何があった?」


「そんな事は後からだ!、とりあえず今すぐにアリスを追うぞ」


 何が起こっている。アリスは無言で何も喋らず、不自然な挙動をしていた。


 それはまるで何かに操られている様な動きだった。





















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