第13話 精神魔法
「アリス!10階層までしか立ち入りは許されていない筈だ、何を考えている!」
11階層に突入していくアリスに叫ぶ。
アリスはその警告を見向きもせず前方にいる魔物の群れに突っ走っていく。
「何がしたいんだ!死にに行ってる様なもんだぞ!」
そう言えば、花の香りがした時からアリスはアリスじゃなくなった。
精神魔法?でも誰がどの様な意図でアリスを殺害しようとする?精神魔法であれば魔力を介して乱しを鎮めることで解除する事ができる。なら一度やってみるしかない。
俺は剣士だ。魔法使いより足を使う。だからアリスの様な動かないを理想ではなく現実にできる魔法使いは足をあまり使わないため、最も追いつき易い。
身体強化を纏い全速力でアリスの肩を掴む。そこから魔力を少量流し込む。やっぱり魔力が乱れを起こしていた。
魔力の乱しを鎮めた事でアリスは足を止めた。
「アリス、大丈夫か?怪我はしてないか?」
「なんか・・・夢を見ていた様な・・・」
そう言ってアリスは目を瞑る。気絶しただけだ。なんの心配もない。
遅れてシンが到着する。
「なんだあれは・・・」
シンが驚きながら指を刺す。指を刺した先には一つの咲いた花を求めて戦う魔物が20体以上いた。
「あの花はなんだ?」
どうしてあの花を求めているのか。
「多分、フェロモンを過剰に含んだ花だろうな」
シンの言葉で俺は確信した。
これはアリスをこの場で殺す為だけに用意されたものだと。アリスを精神魔法で移動させ、フェロモンを求めて戦う魔物に殺させる。
「アリスを護りながらすぐに1階層に行こう。ここは危険すぎる。」
今、アリスは気絶している。魔力が鎮圧されてもすぐには起き上がれないみたいだ。
「アリスは俺が担ぐから援護を頼んでもいいか?」
「任せろ」
帰る際にテントなどは捨ててダンジョンを出る事だけを優先する。
現れた魔物は全てシンに相手をしてもらい、4時間かけてダンジョンを出る事ができた。
「疲れた・・・」
決してアリスが重いわけではないのだが、4時間は限界だ。もう声も体も上がらない。
シンも走ったせいか息切れを起こし過呼吸になっていた。休んでいると気絶していたアリスが目を覚ます。
「ここはどこ?」
「まだ休んでいろ、君は精神魔法で操られ、魔物に殺されかけたんだ。」
アリスとシン二人とも驚いている。
「シンには何で気絶していたのか言っていなかったな」
「大体わかるから不要だ。精神魔法で魔力を乱されていたんだろ?」
「そうだ、次のダンジョン実習でもまた嵌られると思うから気をつけないとな。現状では犯人の証拠となるものは何一つ掴めていない。アリスは本当に気をつけてくれ。」
「それだったらこれからハルトの部屋で寝てもいい?そんなに言うってことは守ってくれるってことでしょ?」
「別に、嫌ではないけど、俺も男だぞ。」
「冗談に決まっているでしょ。何本気にしてるのよ」
「別に本気にしたわけじゃない。」
シンが二人の会話に口を挟む。
「イチャイチャしているところに悪いな。明日は一様ダンジョン実習3日目だ。帰還してしまったから再び行く事はできない。今日はもう遅い時間だから、部屋に戻って休もう」
「俺も疲れたしそうしよっと」
そう言って3人は別れた筈だった。
「なんでさっきから俺についてくるんだ?アリスの部屋はこっち側じゃ無くないか?」
「仕方ないじゃ無い、怖いんだから」
「アリスにも怖いものなんてあったんだな。てっきり怖い物無しかと思っていたよ」
「確かに怖いものはあんまり無いけど、精神が乱れてからしばらく一人で寝るのが怖くなったのよ・・・」
「今日は俺の部屋で寝ていいが、今日だけだぞ。」
「わかってる。」
「代わりにと言うのも何だけど、明日は俺に魔法と鍛錬をつけてくれないか?そろそろ闘技祭があるからさ」
「もちろんいいよ。一緒に組んでくれるなら毎日でもいいのだけど・・・」
「俺で良いのか?俺より強い奴なんてどこ見回してもいるぞ」
「ええ、いいの。」
ハルトは自分の部屋に着いた。後ろにはアリスが着いてきている。
「ギィィィ」
アリスが扉を開けた時に出る効果音を真似る。
「そんな音はこの扉からは出ないだろ」
扉を開け、ゆっくりと中に入って二段ベットに転がる。
「ハルトの部屋、以外と綺麗なのね。乱暴な男の子だから、もう少し汚いと思っていたわ。」
「失礼だな、これでも綺麗な部屋の方が好きなんだ。先にシャワー済ませてくれ、俺は後で入るから。」
「お言葉に甘えて先に済ませるわ」
アリスは風呂場に向かって歩いて行った後、アリスが行ってからダンジョンで起こった事について深く考える。なぜアリスだけで、シンは大丈夫だったのだろうか。
ダンジョン内で殺せば魔物に殺された事にできるからダンジョンで狙ったのは分かる。
現状分からない事が多過ぎる。だから考える事をやめて、目を瞑る。そのまま風呂に入らずに寝てしまった。
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