第14話 鍛錬

 起きると、寝る前には無かった布団が俺にかかっていた。


「アリスはまだ寝ているのか、風呂入って無かったしすぐに済ませるか」


 風呂に入り温かいシャワーを浴び、体を洗う。汗と臭いが段々ととれていく。


「シャワーは気持ちが良いな、ずっと浴びていたいくらいに。」


 俺は長い時間のシャワーを浴び終わり、髪を乾かす。


「朝食の準備もしてあげようかな」


 今は気分が良いので何でもできる気がする。卵とベーコンとウィンナーを使った料理を作る。


「朝から贅沢だ。アリスもう朝だぞ、起きろー!」


 部屋にあるテーブルから二段ベットの二段目で寝ているアリスに声を掛けると、アリスは眠そうに起き上がる。視界に入ったのでもう一度声をかけようとするが、アリスはピンクのブラだけだった。


「人の部屋なんだからシャツくらい着てくれ!」  


 一度あった事なので大袈裟には驚かないが下着一枚くらいは着て欲しいものだ。


「シャツ着ないとダメなの?まあ良いやぁ」


 アリスは大きなあくびをしながら二段ベットを降りてくる。


「朝食の準備はできてるから」


「そうなの?ありがと」


「今日の鍛錬のことなんだけど、結構時間を取ろうとしているんだが、他に予定とか無いのか?」


 アリスの時間を潰すのはあまり良くないと思い聞いてみる。


「うん、もともと今日はダンジョンの3日目だしね、予定は何もないから良いよ」


「なら朝食を食べ終わってから始めてもいいか?」


「んー、その前にもう一度シャワー浴びさせて?」


 そう言って朝食を食べ終わると風呂場に行った。


「俺は先に外で鍛錬しとくから風呂上がったら来てくれ!」


「わかったわ。先に行ってて」


 俺は外に出るとまず一番に素振りをする。身体強化をやっても良いが身体強化をする前に体を動かしておかないと体がぶっ壊れてしまう。


 剣士をやるのであれば持久力も必要だ。決めたコースを周り始め、終わる頃にタオルを髪に掛けたアリスが合流した。


「今から試合と同じ様に対戦できるか?」


「準備満タンだからかかってきなさい!」


 端から端は30m、試合が始まると同時に身体強化で間合いを詰めにいく。


「凍て 潰れよ!」


 10個ほどの尖った氷を生み出し、間合いを詰める間に一つずつ、飛ばす。


「燃え盛れよ!」


 アリスは俺が飛ばした氷を一つずつ火魔法で相殺する。


「前よりは考えて動く様になったね。これは避けれる?陽炎よ 天より出て 燃え盛せ!」


 アリスの頭の上に火の輪っかが出現する。それが回転すると同時に火が継続的に飛んでいく。


 剣に魔力を纏わせ、火を断ち斬る間合いは順調に攻めれているが、まだ何もかもが足らない。


 魔法を撃ってはそれはら簡単に防がれ、身体強化をして詰めようもんなら魔法を何十回も放って、限界まで追い詰めてくる。身体強化を使っても全ての魔法は避けられないし断ち斬れない。


 そう思っているとアリスが言った。


「風魔法得意なんでしょ?貴方が使いやすそうな魔法を二つだけ教えれるけど、どうする?」


「俺が使いやすそうな魔法?是非教えてもらいたい。」


「名前は空中歩行エアウォークと空中翔び《エアバウンド》これは貴方にとって一番と言って良いほどに使いやすい代物だと思うわ。これは無詠唱で発動できるの。まず空中歩行、脳内に風を生み出すイメージをする。次にその風を集め、平らにするイメージをする。それを足元で発動するだけ。これを使う事ができれば空からの奇襲、逃げる場合には空へ逃げる事ができ、戦いも有利に進めれると思うの。」


「次は空中翔び。これも初めは空中歩行と同じよ。脳内で風を生み出すイメージをする。だけど空中翔びには平らな風を作るイメージをした後に、上に向かう突風をイメージする。これで触れると勝手に自分自身が上に向かって翔ぶわ。向きを変える事であらゆる事に使えるから。」


「わかった。やってみるよ。」


 初めは全くできなかった。風を集めるイメージをしても平らにするイメージが上手くできない。だが少しずつだけど形になって来ている。


 実用までに時間はかかりそうだけど、空中歩きについてはどうにか行けそうだ。


 問題は空中翔びだった。


 俺には平らな風をイメージするだけで負担が大きくかかる。二重のイメージをするだけで限界の俺には三重のイメージは負担がかかり過ぎてできなかった。


「教えてもらって申し訳ないんだが、空中翔びは上手く使えそうにない。」


「そう・・・でも空中歩行が出来るだけでもすごい事なんだよ?」 


「ちなみにアリスはどっちも出来るのか?」


「うん・・・」


 気まずい時間が流れた。


「空中歩行は何とか実用まで持っていけると思うから努力してみるよ」


 これを繰り返している間に太陽は沈み、夜がやってきた。


「今日はありがとう。とても良い時間になったよ」


「どういたしまして。今日は部屋に行ったら・・・ダメ?」


「来るのはいいが、シャツくらいは着て。」


「わかったわ!着ればいつでもいいのね!?」


「そう言うことではない。今日は部屋に戻って夕食にするぞ。豪華にするから期待しておけ・・・」


 二人は昨日と同じ様に部屋に戻り一緒に夕食を食べた寝た。















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