第21話 闘技祭2日目
昨日は闘技祭の1日目が終わり、一年、二年、三年の試合がそれぞれ終わった。
魔力の消費などの関係もあり、各学年の6チームが戦うのは今日になっている。
「私達は2回戦目ね。ハルト?前回と同じようなプレイをしたら全然殴るよ」
掲示された対戦表から目を離して俺を見ながら、笑った表情で恐れ多い事を淡々と述べた。
「本当に悪かったよ。別に悪気があった訳じゃなくて、言葉をかけられたんだから反応した方がいいかなって思って・・・」
申し訳無さそうに顔を下に俯かせて言う。
「相手の思惑に綺麗に乗せられ過ぎなの、それだけ気をつけてくれたら良いから」
「はあぁ、勝ったのに二人ともどうしてそんなに雰囲気悪いんだよ。アリスも言い過ぎだ。昨日からハルトはずっと反省してるだろう?そんなに怒鳴らずに励ますくらいしたらどうだ?」
ラグナが二人の会話に割り込み、ため息を吐きながら雰囲気を良くしようと努力する。
「確かにね、少し言い過ぎたわ。次は言ったこと直せるように頑張ってね。もう怒らないけど次は無いから。それだけは覚えてて」
アリスにラグナの意思が届いたのか、俺を罵倒することをやめて励ましに変える。
俺は心を折られ、うんともすんとも言えずに押し黙った。
場面は移り変わり、2日目の第一試合目。
「エイタ・ブリングスチーム、ウェル・デュースチーム前へ!それでは試合開始!!」
一日目と同様、審判がコールの声を大きく上げ、試合が始まった。
前日のエルフ単独での圧倒を気にしてか、ウェルチームは目力を鋭くしてエルフの行動だけを観察している。エルフだけしか目に入ってなく、アリサとライカを見向きもしていない。
アリサとライカはエルフだけしか眼中にない事に不満を抱いたのか顔を曇らせ、魔法を放つ。
今回は試合場に近く、身体強化で耳を強化することで声がしっかりと聞こえてくる。
「そんな目でエイタ様を見ないでよッ!陽炎よ 天より出て 燃え盛せ!」
ライカが魔法を放つが、自分が見られていない事が不満なんじゃ無くてエルフを鋭い目付きで睨んでいるのが不満なのかよと、本人にツッコンでしまいたいぐらいだ。
アリサは頭上に輪っかをを出現させ一定時間、定期的に火が相手に向かい行く。アリサもライカも順位では10以内の屈指の実力者であり、アリスと同じように威力が一段飛び抜けている。
ウェルは華麗に避けきり、ライカに向かって反撃に出る。
「土よ 地面より這い出て 砕き爆ぜろ!」
地面から大型の尖った土が這い出て凄い勢いで爆破していく。爆破された勢いで拡散される岩粒に当たるだけでまずく、土が下から急に這い出てくるだけでも危険なため、使われた人からすると絶対に避けなくては行けなく面倒くさい。
「そんなんで私をやれるわけないでしょッ!風よ 吹き裂け!」
数十にもなる風の刃がウェルに向かう。
「風よ 吹き裂け!」
ウェルは当たり前のようにライカの出力に合わせ相殺する。ウェルも10以内に入る実力者。技の使える種類、魔力、出力は相手に劣らない。どちらも互角、魔法の攻防が面白くて仕方がない。
少し時間が経つと、現実創造を使用し蔓を自由気ままに振り回しているエルフの姿がそこにあった。
「おお、捕まりませんか。凄いです、もっと楽しませてくださいよッ!」
エルフの顔は今までに見たことが無い笑みを浮かべていて、俺は楽しそうにしていると恐れを感じた。
前回と違いがあると言えば、時間が経っても誰も蔓に捕えられる事なく、抗えている所だ。火で燃やし、風で切り裂き、氷風で凍らせる。様々な手段を用い問題なく戦いを継続している。
ライカとアリサが蔓を援護し、エルフは捕えようと必死に無言を貫いている。
「クソッ!いつまで続くんだよこの状況!蔓は切っても焼いても止まらないし、ライカとアリサの魔法が一々うざい!」
「うあっ!すまねぇ!魔力が足らんくて捕まったわ!」
ウェル側の一人が蔓に捕らえられ、ブンブンと振り回されて闘技場の壁に投げつけられる。例え魔道具が保護してくれているとは言え、多少の痛みは身体に響く。
壁に叩きつけられた仲間はそのまま気絶し、状況は不利に不利が重なっていく一方。
ウェルは状況を覆そうと魔法を懸命に放ち、ライカと蔓を同時に相手し、ウェルの仲間はアリサを抑えているが魔力の出力が段々と弱まっている。
「もう魔力がほぼ尽きてる見たいね、これで終わりにしてあげる!集いし雷鳴よ 轟音と共に 引き裂け!」
ウェルの仲間を囲う様にして四方八方から雷が順番に降り注いでくる。
「うッ・・・これは今の僕じゃあ対処できないな。ごめんウェル!俺はここまでだ!」
火魔法を雷魔法に当てることで、空中で爆散させていたがそれも束の間であり、対処が間に合わずに3つほどの雷を直に受けてしまい脱落となった。
二人脱落となった今、ウェルが降参しても誰も文句を言わないにも関わらず、ウェルは勝敗が決まるまで諦めず最後まで戦う。
「火炎よ 燃え盛り 焼き尽くせ!」
ウェルが魔法を潤沢に込めた燃え盛る火をエルフが立ち止まっている前方に勢い良く放つ。その火は蔓へと燃え移り、全てを焼き尽くす。
「これはまずいですね」
エルフが初めて現実創造の使用をやめて後方に下がる。
「エイタ様に何て無礼な事をすんのよ!これで潰れなさい!集いし雷鳴よ 轟音と共に 引き裂け!」
「これが無礼だって?そんなの全て無礼にあたるじゃないか!まずどうしたらそこまでそのエルフに魅力を感じるんだよ」
ウェルは俺がツッコミたい事を口に出し、後にエルフを非難する。
「おやおや、喧嘩は良くないですよ。大樹よ ここに現れ 飛ばし裂かせろ!」
現実創造の中級、大樹が現れ育った木枝、葉がギリギリ目で追えない速度で交差する。
土よ 鉄壁の如く我を 守れよ!」
ウェルが土魔法で防壁を作り、エルフの魔法から身を守る。
「これも避けますか。流石ですぞ、これは避けれますかッ!大地よ 我の大地へと変わり果て 万物の力を封じろ!」
エルフが詠唱を唱え終わると、闘技場のタイルは緑の大地に変化し、その大地へと立つもの、触れている者の持つ魔力を吸い取る特別魔法。
「何だこれは!魔力が・・・」
ウェルは突然跪く。そこにライカが近づき顎を蹴り上げウェルは倒れ込む。
「エイタ様に向かって無礼な行為を幾度となくしやがって!今回はエイタ様な慈悲で不問としてあげる。」
次に火魔法を放ち、何も反抗できないウェルはそのまま食らうことになった。
「うッ・・・」
魔力が吸収され続け、まともに言葉も喋れない様子。ここで試合が終わったと見た審判がコールをする。
「勝者、エイタチーム!」
次は俺達の試合、呑気に試合を眺めていたのが理由で準備すら一切していないのですぐに個室に戻り、準備を終わらす。
「次は罵倒されるプレイではなく、褒められる様なプレイがしに行くぞ」
そう呟き、二人と合流する。
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