第19話 エルフの荒らし

 二回戦目が今から始まる。


「エイタ・ブリングスチームとベトリック・チャードチームは前へ・・・それでは開始!」


 二チームは足並みを揃えて闘技場に足を運び、開始に合わせて同時に動き出す。


 一試合目の展開とは全く違い、クソエルフが笑顔を観客に見せ、手を振りながら前衛に立つ、薄い赤色の髪をしている美少女アリサ・カーテインズ、茶髪のロングの髪をしている美少女ライカ・バーテリアもクソエルフと同じように手を振りながら観客の眼を盗み歩き、後衛となる陣形を組む。


 イケメンなだけあってクラスの中でも人気の女子を連れているなと思っていると、周りからなんであんな奴に・・・と愚痴を溢す者までさまざまな反応をする人がいた。


 周りの観客はエルフの美しさと連れている美少年に眼を盗まれ、試合の存在をすっかり忘れている。


 悔しいが顔だけは否定できない、クソエルフと呼んでいる俺でもかっこいいと思うから。


 ベトリックチームはクソエルフに釣られ、同じような陣形に人の配置を変える。ベトリックは前衛に、仲間のトリアとカッシが後衛に陣形を組む。


「ハルト、ずっと見てると飽きない?」


 毎日聞いている声がするので後ろを振り向き言う。


「飽きる訳ない。だって俺は戦いが好きだし、見る事で俺がどんな風に鍛錬を重ねればいいのかわかる研究にもなるんだから」


 魔法のぶつかり合いを見ているとわかる。


 どの魔法がどの魔法に弱いかなど、魔力が人並み少ない俺にとってはそれを把握し、駆使する事で魔力の消費を最小限に抑え、魔法を避けることができる。


 俺が見ている理由はそれだけ。


「そう、この試合はすぐに決着がつくかもね。あのエルフは強いよ、私だって勝てるかどうかわからない。魔力量も私と少ししか変わらない」


 アリスが自分と同等の者を語るのは初めてだ。


 いつもなら少し余裕な顔している筈のアリスが、珍しくも今は不安そうな顔をして自信をなくしている。


 こんな話をしている間に試合が進み始め、今はクソエルフがベトリックに向かって火魔法を放ち、後ろからアリサとライカが雷魔法と氷魔法で援護をしている形だ。


 ベトリックチームはベトリックが前に出て、中級の岩魔法で、魔法を通す気のない壁を作り出すことで全ての魔法を防ぎ、トリアとカッシが火魔法と水魔法で反撃する。


 アリサが中級氷魔法で氷塊を自由自在に出し、相殺に加えてトリアを狙い、氷塊を伸ばす。


 ここまでは双方見応えのある攻防をしていると思っていた時、エルフが前に出向くが魔法を放つ気配がなく、何がしたいのか誰もわからない。


「今からがあのエルフの本番、始まるよ一方的な蹂躙が・・・」


 アリスの言葉の後に待っていたのは言葉通りの圧倒的な蹂躙だった。


 エルフが歩くと同時に足場に発生する花、樹木、エルフが対象に手を伸ばすと、樹木が蔓のように変形し、対象を絡めようと不規則な動きをしながら迫る。


「あれは現実創造リアルクリエイティブ、あれが神に愛されたエルフだけが使用を許される特別な技なのか?」


 俺は現実創造を一度も見たことがなく、聞いたことしかない。


「そう、あれが現実創造。あれを使われたら私ですら敵わないと思う」


 心底自信がないのか、その蹂躙から目を背けようとしている。


 目をアリスから離し、もう一度闘技場に向けるとそこにあったのはトリアとカッシは蔓に足を掴まれ、ベトリックが火魔法で燃やし、それを対処しようとしている光景。


 アリサとライカが手出しをせずとも試合は進んで行き、試合はベトリックチームの降参で幕を閉じた。


 次の次が俺たちの試合になっているため、自分たちの前の試合を見ることはせず、個室に準備をしに行った。










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