第16話 剣魔闘技祭目前

 あと2週間後待ちに待った闘技祭。


 組む人はまだアリスしか決まっていない。シンは今回違う人と組んでみると言う事なのであと一人違う人を探す必要がある。


「ハルト一人か二人空いてるなら一緒に組もうぜ!」


 後ろから俺を呼び止める声がしたので振り向く。そこには金髪の男が立っていた。


 誰か忘れてしまい思い出せない。誰だっけな・・・ラグナ・カルディアだ。


 魔法生物学の時に何度か隣に座り、何十回も話した人だ。ダンジョンの内容に記憶を染められ、人の顔と名前すら忘れてしまっていた。


「一人だけ空いてるんだ。ちょうどよかったよ」


「一人は誰なんだ?アリス嬢か?」

 

「何で知ってるんだよ。答えは合ってるけどな」


「だっていつも二人で仲良くイチャイチャしてるから分かるっつの!この前の夜なんてお前が部屋に連れ込んでる所を見てしまって驚いたぜ」


 ここは教室で人が多い。ここでは話せない様な話をぶっ込んできた瞬間、周囲がいきなりざわつき始める。


「おいやめろ、ここは教室だからやめてくれ。あと連れ込んだ訳じゃない」


 帰ったのは2日目のはずなのに見られている事に驚いた。たまたま俺たちよりも早く帰ってる人がいたのか・・・


 次からはもう少し警戒しないとな。


「悪かったよ。俺は闘技祭に備えて模擬戦でもしてくるからアリス嬢に代わりに伝えててくれ」


「ああ、わかったよ」


 ラグナは闘技場に走って行った。


 周りを見回すと大体は三人で固まっている。多分ダンジョンや闘技祭で組む人と固まっているんだろう。


 俺はアリスとラグナがいないので1人孤独な可哀想な人になっている。それが嫌になり、なんとなくでアリスを探しに行く。


 クラス、闘技場、外全てを探しに行ったが全くいなかったので、部屋に行ってみることにした。


「ここだっけな、アリスの部屋。」


 コンコンコンと3回ノックをする。そうするとはーいと言いながらアリスが出てくる。


「どうしたの?私が居なくて寂しくなったから来たの?」


「そんなんじゃない。あと一人の組む人が決まったからそれを伝えに来ただけだ。」


「ふーん。まあいいや、入って入って」


「いや、別に入らなくても」


 入ることを拒もうとするとアリスは鋭い目つきで睨んでくる。


「わかった、入ります入ります」


 これは拒んではいけないものだと悟り俺は大人しく部屋に入る。部屋は掃除されていて何処を見ても綺麗だ。それに良い香りがしてきて、それに釣られてベッド辺りに自然と目がいってしまう。


 そこにはクマさんのぬいぐるみなどがいくつも置かれていて、女の子なんだなと意識させるベッドをしていた。


「ここに座って話しましょう?」


 ベッドに座って隣を手でポンポンし始める。


「普通に机あるんだからこっちで良くないか?」


 また鋭い目で睨まれる。


「わかった。そっちで話そう」


 アリスが先に口を開く。


「もう一人は誰なの?」


「もう一人はラグナだよ。雷魔法が得意なんだとよ。だからそれで作戦を立てよう。」


「貴方はまた剣をメインに使うの?対人戦となると簡単には行かなくなると思うけど・・・身体強化で魔力も根こそぎ持っていかれるでしょ?」


 アリスは魔法をメインに使って欲しそうに言う。


「俺は剣をメインに戦うよ。何があっても魔法よりも剣が好きだから。もう剣に慣れてるから魔法メインの戦いは出来そうにない。」


「そう。なら私とラグナ君で貴方を援護するわ。それかラグナ君には遠距離攻撃に回ってもらっても良いかもね。」


「アリスもメインで戦ってくれ。自分の事は自分で守れるから。アリスの手を塞いで足手纏いになる事はしたくないんだ。だから好きに戦ってくれ。」


「わかった。でもこれに勝てるかどうかは貴方が鍵になる。三対三だから貴方が倒れてしまうと、流れで私達は負けてしまうかもしれない。特に同級生の実力は分からないところが多い。実技で一通り戦い方は見たとは言えど、大技は隠すもの。私だって隠しているわ」


「そんな大技隠してる様に見えなかったけどそんなのあったのか?俺は大技なんて大層なものは何一つ持っていない。何なら現在進行形で底辺を引きずる程度の実力で闘技に出るのすら間違っていると思うんだけど・・・」


 俺は自分の実力にガッカリする。


「貴方自体がその大技と同じ様なものよ。敵は貴方の様な剣士との戦いを知らない。まだ剣士との戦いを知っていたとしても魔法と剣を両立する者との戦いには慣れていないはず。だから貴方を攻撃のメインにとして作戦を立てるわ。」


「わかった。頑張ってみるよ。じゃあ今日はそろそろ部屋に戻るよ」


「別に今日ここでゆっくりしても良いのに」


「そんな事男に言いまくってると2年の頃には腹が膨れて学園から居なくなるぞ」


「貴方にしか言ってないわ。残念だけど今日はこれでお別れね。」


「じゃあな」


 そう言って部屋を出る際に手を振りながら扉を閉める。


 闘技祭では何があっても勝ちたい。なぜなら3位までには賞金があるから。別に金に釣られた訳ではない。金があると色々便利だから欲しいだけだ。


 勝つために俺はもう一度鍛錬をしに行く。















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