天才科学者

 イネスの所有者マスターであるミヤビは、地球で有名な天才科学者だ。


 天才がゆえに、地球でとやらかしたため、月へ逃げるように移住してきたのだという。


 月でもいろいろとやらかして、追い出されるのも時間の問題だと、アポロは常々思っている。


「よお、アポロ、元気? 今日も真面目くさった顔してるね!」


 ミヤビはそう言うと薄汚れた手でアポロを撫でようとした。アポロはさり気なくよけた。


「こんにちは。マスター・ミヤビ。マスター・エリーゼの仕事を増やしていただきありがとうございます」


「あはは、代金はちゃんと払うって。イネスもめちゃくちゃ綺麗になったし」


 アポロの嫌味にもミヤビは動じない。


「支払いは月末でもいいわよ? 別に急がないから」


 いつも金欠のミヤビを気遣って、エリーゼが言うと、ミヤビは大丈夫大丈夫と、奇怪で独特なメイクをほどこした顔の前で、手を振った。


「心配しないで。イネスのエネルギーを、安いやつに変えればすむことだから」


「ガーン!!」


 イネスがショックで倒れそうになった。

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