「つき~すすめ~、月まで、突き進めぇ~、僕ら~ロボット~」


「……」


「この~先の~道に待つのは~なんなのか~それは未知~わからない~ロボットなのに~わかんない~だけど~ぼくらは~希望に満ちてるぅ~」


「……」


「アポロ、今こいつうぜぇな、とか、思ってないよね? 一緒に歩くのいやだな、とか思ってないよね」


「私はそうは思っていませんよ、イネス。イネスと一緒で私は嬉しいです」


「いつも以上のすごい棒読み」


「イネスは歌が上手ですね」


「アポロも歌えば? 鼻歌程度で歌えば、エネルギーだってそんなに使わないよ」


「遠慮しておきます」


「大丈夫だよ、アポロ。ここには僕とアポロしかいないんだよ? 誰もアポロの歌を、聞いてるだけで気が滅入るとか、お経だなんて言わないって」


「イネス、ちょっとうぜーです」


「ごめんなさい」


「そろそろお昼……12時ですね」


 お昼と言っても真っ暗で、相変わらず周りは何もなく、岩だらけの地形だった。何の音もせず、辺りに響くのは二体のボディの軋む、ぎしぎしという音だけ。

 その様子を記録しながら、アポロは思う。地球に衝突した隕石は、大地震と大津波を起こし、また、地球の内部にまで影響を与えたようだった。


「氷の大地とかになってなくてよかったよね。さすがに、僕ら動かなくなっちゃうし」


 イネスが腕を一振りして言った。


「そうですね。こんなに長い間、太陽の光が遮られているのに、地球が凍り付かないなんて、不思議ですが、私たちには有難かったことです」


 アポロはそこで少し黙って、


「有難かったことなのかな……」


 ぽつりと言った。


「アポロ、少しうぜーだよ?」


「……はい」


「いやそんな本気にしないで」

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