バー・エネルギー
「おかわり、お願いします」
アポロはエネルギー・ジョッキを掲げ、店員ロボットに頼んだ。
すぐさま新しいエネルギー・ジョッキが運ばれてくる。
アポロはそれを一気に飲み干した。
「お、あんた、いい飲みっぷりだねえ、なんかあったのかい?」
隣の席に座る見知らぬロボットがアポロに話しかけてきた。
アポロは飲み干したジョッキをテーブルに置き、
「ええ。ちょっとまあ、自己嫌悪に陥っていまして」
半ば投げやりに、自嘲気味に答えた。
「自己嫌悪? 人間みたいなことを言うんだね」
見知らぬロボットは球体の頭をくるくる回転させながら笑い声を上げた。
「ま、あっしは造られてなんと50年! このバー・エネルギーでは古参だから、何でも聞いておくんなよ」
アポロの背中をばん、と叩いて、また頭をくるくるさせる。
自分は造られてもうすぐ100年ですけどね、とアポロは思ったけれど、別にここで言い返すことじゃないと判断し、くるくるロボットの話を聞いていた。
ここはロボットの憩いの場「バー・エネルギー」。ロボットの気分をほどよくハイにする、特殊なエネルギーが提供されている。
ロボット達も人間に思考が近づくにつれ、ストレスを抱えるようになった。ストレスがたまると、どこも故障してないのに、動きがにぶくなったり、ミスを犯すロボットがでてくる。
そのストレス発散の場として、地下空間にはこのような場所が随所に設けられている。
アポロは普段ほとんど訪れないが、今日は飲みたい気分だった。
「もう一杯、お願いします」
「お、いいねえ、あっしと飲みくらべだ! くるくるくるくる~」
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