地球に残されたロボットたち

ふさふさしっぽ

2452年 地球

アポロとイネス

「イネス、朝の6時です。起きましょう」


 アポロがイネスを揺さぶった。


「もう起きてるよ」


 イネスが地面に仰向けに転がったまま答える。「僕の中の時計だって、6時にセットしてあるんだから」


「それなら、転がってないで、起き上がって下さいよ。朝なんですから」


 アポロはイネスの顔を覗き込んだ。アポロの、頭と胴体の連結部分が、ぎしぎし音を立てる。


 朝の6時、といっても辺りは真っ暗だった。イネスが見上げる空も、一面真っ暗で、太陽は見えない。


「イネス」


 アポロの口調が厳しくなったので、イネスは仕方なく起き上がった。アポロと同じように、ぎしぎし音を立てて。


「ねえアポロ。僕らが最後に太陽を見たのって、いつだったっけ?」

「この地球ほしの時間で100年と145日と6時間18分22秒前ですよ。わざわざ私に聞くまでもないでしょう」

 そりゃそうだとイネスは思った。僕にだってすぐに分かることだもの。だけど、律義なアポロは真面目に答えてくれる。

「ありがとう、アポロ」

「どういたしまして、イネス」


 アポロとイネスはロボットである。アポロが200年前、イネスが120年前に造られた。ボディは古くなるたびに取り換えられてきたけれど、脳にあたる記憶部分だけはそのままだった。円柱形の体に、半円形の頭を乗せた二体は、外見だけは、ザ・ロボット、といったふうだった。


「さあ、一日のはじまりです」

 暗闇の中、アポロが言った。

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