すねるロボット

 30分後、ドロドロだったイネスは、綺麗になった。


「ありがとう、エリーゼ。さすがだね、前よりピカピカになったよ」


「どういたしまして、イネス」


 エリーゼは微笑んで、イネスの頭をやさしく撫でた。イネスはアポロと同様、140センチの背丈だったので、背の高い彼女を見上げる形になる。


「イネス、こちらが今回の請求金額です」


 アポロがイネスに向かって冷たい声で言った。


「ええ? 高くない? アポロ」


「高くないです。専用の薬品で、あの緑のドロドロを落としたんですから」


「エリーゼ、アポロも撫でてあげてよ、すねちゃうから」


「すねてなど、いません。いいですか、イネス、この請求の内訳は……」


 そのとき、表から声がした。


「あれ~? 誰もいないの? イネス来てなーい?」


「あら、イネスのマスターのご登場よ。はいはい、ミヤビ、今みんな奥にいるのよ」


 一人と二体が店の表に出ると、そこにはゾンビのような若い女が立っていた。見た目がゾンビなだけでなく、動きもふらふらして、ゾンビめいていた。


「また発明に没頭して、何日も寝てないんですね。イネスのマスターは」


 アポロは呆れた、とでもいうように、平坦な声で言った。


「なにせ、天才科学者だから」


 イネスが答えた。

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