散歩中のアポロ
ああいったイネスの発言はいつものことだ。アポロは気にせず、散歩に出かけた。
(少し遠くへ行ってみよう)
そう考えたアポロは、方向を「北」と定め、真っすぐに進んだ。
進んだ分だけ以前のデータを上書きした。
どんなものが見えるか、どんなものがあるか、どんな音が聞こえるか。
以前ここを歩いて進んだときのデータと、そう変わり映えしなかった。変わり映えしなくても自動で更新するようになっている。この辺のデータを上書きするのは6278回目。
高速移動したり、空を飛んだりできないアポロとイネスは、エネルギー貯蔵庫を起点として、同じようなところをぐるぐる散歩するしかない。エネルギーが補給できなくなったら機能停止してしまうからだ。
アポロとイネスは、この地球上で二体だけになってから、とにかく歩いて地上のデータを更新し、エネルギーを補給する、の繰り返しだった。
100年間、その繰り返しだった。
ロボットなので、それを退屈だと思うことはなかった。ただ、アポロはそれに意味があるのかどうか、考えるようになっていた。
アポロとイネスの見た目は「ザ・ロボット」だけれども、二体は自分で学習して、考えることができるロボットだった。そういう機能を脳に持っている。
中身は、人間に近いと言ってもいい。
アポロはその場に立ち止まって、空を見た。現在8時15分56秒。本当なら、とっくに太陽が昇っている時間だ。
「……何も、見えない」
空は分厚い塵で覆われている。
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