名前・2
「イネス、イネスというのはマスター・ミヤビが付けてくれた名前ですか」
アポロはすでに地面に寝転んでいるイネスの方を向いた。
「そうだよ。新しい名前が欲しいって言ったら、結構真剣に考えてくれたんだよ、一週間ぐらい。あのミヤビが」
「それは、意外ですね。あのずぼら……いえ、おおらかなマスター・ミヤビが」
「だろう? もう僕は人間だったら泣いてたよ。あんなに感動したことはない」
イネスが仰向けのまま、泣きまねをした。
「それで、イネスになったんですね。素晴らしい話です」
「いや。ミヤビが一週間考えぬいた名前は、ある資産家が権利を独占しているからと、登録できなくてね。ミヤビはその場でキレて、もう、イネスでいい! はい決定! ってそのときのめり込んでたゲームの、女の子キャラクターの名前を僕に付けた」
「ミヤビらしいですね」
「まったくだよ」
そう言いながら、イネスの声がどこか柔らかい調子になっていた。ミヤビと暮らしていたイネスはとても幸せそうだった。アポロは遠い記憶を引き出し、そんなふうに思い返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます