2452年 地球

思い出

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 アポロは目を覚ました。


 座ったまま、スリープモードに入ってしまったようだ。


 辺りは真っ暗。


 空も、地面も、一面に真っ暗だ。人間の視力だったら、とうてい数メートル先も見えないだろう。


 イネスは仰向けに転がったまま、


「ミヤビ~、買いすぎだよ~、家がガラクタだらけになっちゃうよ~」


 と、寝言を言っていた。


 イネスも夢を見ているんだ、とアポロは思った。今の私がそうであったように。


 幸せな夢だった。


 月にいたころ……100年前の思い出。

 マスター・エリーゼのお世話ロボットになり、イネスと出会い、ミヤビと出会い、本当に幸せだった。


 うれしいとか、楽しいとかじゃなくて、「幸せ」。たまに人間が口にする言葉。アポロが造られたばかりのころは、理解できなかった言葉。人間の感情だと思っていた言葉。


 今のアポロにははっきりとわかっていた。


 あの頃、私は幸せだった。


 100年前の月で、私は、幸せだった。


「私も人間めいてきたなあ。何しろ、夢を見るくらいだから」


 独り言を言った。本当は、夢ではなく、脳の中の記憶装置の情報が、何らかの形で出力されたのだと思うが。


「ミヤビってば、まずいよ、爆発する、うわーこっちは水びだしだ! 大変だー!」 


 イネスがジタバタしている。ミヤビの発明につき合わされている夢をみているんだろう。さっきのは、きっと、買い物につき合わされてる夢……。


「イネス、そろそろ出発しましょう」


 今は、イネスと二体だけ。この、滅んだ地球上で。




終わり。



ひとまずここで終わります。

続きを書くかは未定です。

ここまで読んで下さって、どうもありがとうございました。

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地球に残されたロボットたち ふさふさしっぽ @69903

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