引き取り

「すみません、もう今日は閉店です」


 店員ロボットがマニュアルどおりに対応した。


 イネスはびっくり、というように両手を上げて、


「ええ~! ミヤビの発明手伝わされてこんな時間になっちゃったんだよ、しかも安いエネルギーしか貰えないしさ、踏んだり蹴ったりだよ。一杯だけ、たのむよ~」


 と、泣きを入れた。


「イネス、このくるくる回ってるロボット、知り合いじゃないか?」


 店主が、今やすっかりハイになり、踊るようにくるくる回り続ける二体のロボットを指さし、イネスに聞いた。イネスはバー・エネルギーの常連なので、店主も気楽な口調だった。


「ああ、頭が球体のキューさんね、あと……え!? アポロ? どうしたのさ、珍しい」


 イネスはアポロをみとめるなり、近寄って、回転を止め、肩をゆすった。


「アポロ、僕だよ、分かる? 普段飲まないのに、一体どうしたんだよ」


「球体のキューと、ずーっと飲み比べやってたんだ。十杯以上飲んでたな」


 店主の話を聞いて、イネスは驚いた。


「普段そんな誘いに乗ったりしないのに。アポロってばどうしちゃったんだ? じっちゃん、僕の知り合いだから、連れて帰るよ」


「悪いな。イネス。キューさんの方はスリープモードにして一時預かりだな。やれやれ」


 じっちゃん店主がそう言うと、店員ロボットも真似するように「やれやれ」と肩をすくめた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る