第3話

「まぁまぁそう言わず。受け取っておいたほうがいいですよ。武器はいくつあってもいい。それと、殺すのは私達受付だけではなく、お互いに殺りあってもらっても構いません。構いませんが、あまりオススメはしません。皆さんはチームですから」


 元の位置に戻り、再度説明に受付は移行。一旦、落ち着いた。気持ちよく喋ることができる。それにしても邪魔だな、寝転がってる人。


 ここで今までひと言も口を開かなかった、もうひとりの男、金髪が壁にもたれかかり、周囲を確認する。


「チームだぁ?」


 非常に不機嫌。今まで無言を貫いていたのも、ちょっとずつ怒りを溜めていたから。それが今、チームという単語が引き金になって溢れ出した次第。


 無視してこのまま進めようかと受付は考えたが、せっかくなのでそちらにも話を振ってみる。


「やっと喋ってくれましたねNo.96。あなたもまぁまぁ殺してますね。えーと、ちょっと待ってくださいね」


 先に若い女性のほうから。レディ・ファースト。先に選別しておいた銃を懐から取り出し、今度は投げるでもなく優しく手渡す。


 なんだか「これでパンでも買いなさい」と硬貨でも恵むかのように慈愛に溢れた渡し方。それに女性は気持ち悪さを覚えつつも。


「これは? 私は銃とか。渡されても」


 撃ったこともない。指で輪ゴムを飛ばしたくらい。輪ゴムスナイパー、っていうのかな。こんな本格的なもの。


「『スミス&ウェッソン モデル460』。あなたは可愛いので銃も可愛いものを選ばせていただきました」


 その『KAWAII』の基準は受付自身のものだけど。プリティーな女の子には殺傷能力の高そうなものがよく似合う。


 まじまじとそのスミスさんとやらを見つめながら、唇を突き出した女性はひとつ提案。


「試し撃ちしていい?」


「どうぞ」


 という冷淡な受付が言葉を言い切るか否か、というところで女性は倒れている人物に向けて一発。ハンマーを起こしてもう一発。感覚を確かめながら、のはずだが、どこか「?」というような不可思議な反応。とりあえず。


「こんな感じ?」


 視線を向けられた受付は小さく拍手。


「お見事」


 腕前も。精神も。冷徹さも。申し分ない。


 しかし、そのやりとりを黙って見つめていた金髪が怪訝そうに口を開く。


「妙じゃね? さっきから気になっていた。なんで『反動がない』? 少なくとも、そんな子供に扱える代物じゃないだろーに」


 ケッ、と心をまだ許していないことをアピール。受付らしい女も、この女も。ゴリラみたいな男ならともかく、少なくとも片手で撃って反動で腕が持っていかれない、なんてのはおかしい。コントか? コントに巻き込まれてるのか? 転がってる男もグルか?


 しかしそれは事実で、全ての拳銃は片手で持てるように設計されているというが、慣れていなければ銃を落としてしまったり、マズルジャンプしてしまい正確に持っていられない。観光地で客用の場合は火薬を少なめにしている、というのはあるが、それとまた違う気もする。


 女性は眉間に皺を寄せて睨みつける。


「子供? 子供扱いは嫌いなんだよな」


 ハンマーに指がかかる。まだ弾数はある。残り全弾。ブチこんでもいい。

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