第22話
「いや、説明雑。血液を沸騰て。どうやったらそんなことができるの」
段階をいくつも飛ばして説明されることに、納得のいかないアデレイド。怒っている、というわけではないが、なんだかスッキリしない、釈然としない気持ちを抱える。
そう言われても、当の本人であるエリオットにもまだ全てが信じられるわけではない。「まさかできるとは」というのが実際の感想。
「普通だったらできない。ここでもできるかは賭けだったからな。ただ、その賭けに勝った。予想が当たった」
運がいいだけ。そう割り切ったほうが正しい気さえ。もう一度やれと言われてもできるかどうか。
とはいえ、腑に落ちないのはオーガストも一緒。せめてなにが起きたのかだけでも詳しく知りたい。
「原理は? どういう原理でこうなる?」
エリオットがイメージしたもの。それは以前から興味を持っていた生き物。
「電気ウナギはなんで発電できるか知っているか?」
静電気のせいで、なんの関係もないけれども恨んだこともあるヤツ。なんで水中でこいつだけ感電しないんだ、と羨ましくもあったりして。
突然、意図していなかった生物の話をふられてオーガストはたじろぐ。なんで今ウナギ? 燻製とか。好きだけど。
「……あのニョロニョロした? 電気とか起こすやつか?」
あと、たしかウナギと言っているけどナマズのほうが近いとか。そんな雑学もあったはず。少しお腹が空いてきた。死ぬ覚悟はできていたつもりだったけど、腹は減るもんだなと自覚。
小さな頃にエリオットも調べた過去がある。その不思議な生態。体を覆う粘液。などなど。
「体の八割ほどが実は尾でな。その部分を動かすことでナトリウムイオンが細胞内に入り込み、元からあったカリウムイオンと電池のように直列で繋がり、結果電気が流れる」
乾電池のように。興奮するとそうなるらしいが、なんでそういう風に進化できるのかわからない。世界は不思議に満ち溢れている。
筋肉の細胞が変化した『発電板』と呼ばれる器官。体内に数千から一万を超える枚数を持っており、多ければ多いほど強力な発電ができる。水中で自身は感電しない、と思っていたが、実際はしているらしく、単純に脂肪が厚くて感じ取っていないだけ。
なんだかよくわからないが、なんか上手いことやると発電できる。そうアデレイドは理解した。してみた。無理やり。
「それが人間でも可能ってこと?」
そこが重要。いや、実際やってみたらしいけど。人間にそんな力が、奥底に眠っているというのはなんだか信じられない。
それについてあっさりとエリオットは否定。
「普通は無理だ。だが、この場所はどうもそうではないらしい。特殊すぎる磁場が人間の体内に発電板のようなものを作り上げ、帯電と発電を可能としているようだ。なにも俺が特別なわけではない。二人もできるはず」
人間の筋肉の動きなどは脳からの電気信号、つまり弱い電気は常に発生している。赤ん坊であろうと大男であろうと。ならば不可能、ではない。
一体なにを根拠に言っているのだろう。イメージ、イメージなんだろうか? とりあえずアデレイドは手から電気が放たれるという願望を持ち、前方に手をかざす。が。
「……できてる気、しないけど」
「俺に向けるな、俺に」
その視線と腕の先にはオーガスト。もし万が一発生していたら。直撃をくらっていた形になる。なんてことを。
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