第23話
それを興味深そうにエリオットは見つめる。誰でもできるはず、というのは間違っていないはず。即座にできた自分が特別優れている、という気はしない。そんなに自分への評価は高くない。
「……なるほど。個人差がかなりあるのかもな。このあたりは色々調べてみる価値はありそうだな。面白い」
ここに来て。初めて心から冷笑。いつでも死んでいい、という気持ちは変わらない。だが。なにかこの場所について、自分なりに突き止めてからでもいい、そんなことを考える。いや、そんなことを言える立場ではないことはわかっているが。
気になっていた原理、それはなんとなーくオーガストにもわかってきた。だがそうなると更なる疑問も浮かんでくるわけで。
「あんな化け物を殺れるような電圧とか出るのかよ。ビリッ、くらいじゃびくともしないだろ」
血液を沸騰、なんて簡単に言われても、そのためにはそれなりの力が必要なはず。馬とかが逃げないようにする電気柵が思い浮かんだが、あれとはまた違うだろう。確実な殺意を持った威力が必要になるわけで。
「人間でも五〇ボルトあれば死ぬと聞く。あとは電流と、それを持続できる時間が問題だったが、どうやらクリアできたようだ。このあたりは専門家じゃないからなんとも言えんが、ここはやはり俺達の認識など遥かに超えた場所にあるらしい」
そこは実際にアロサウルスを使って実験してみたエリオットも気になっていたところ。どれだけあれば足りるのか。アンペアは。何秒。そんなのはコントロールできないが、全力でやってみただけ。何ボルトで何アンペア出ていたのかすらわからない。測ることなどできない。
雷に打たれても急死に一生をえたり、逆にほんの少しの感電で即死したり。そこには様々な因果関係が存在する。電気柵は万単位のボルトだが、ほんの一瞬だけしか電気は流れず、大きな電流とはならないため死ぬことはない。皮膚の抵抗があるため、濡れたりでもしていない限り電圧の高さでは危険とは言い切れない。ないことづくめ。
しかしそれだけのことを。あの死ぬ間際に思いつく胆力にアデレイドは驚きを禁じえない。
「……あんた、何者。やけに詳しい。生物を殺すことに」
人間にも。恐竜にも。たぶん、他のものにも色々な角度から死を与えることができる。そんな予感がする。
警戒されている。それも仕方ない、とでも言うかのようにエリオットは視線を外して謙遜する。
「……ネットの情報で充分調べられる範囲だ。アロサウルスに効くかは本当にわからなかった。運が良かっただけだ」
あくまでラッキーゆえにこうして今、生きている。それだけ。
例えば噛みつきが主力な技である恐竜や、空を飛ぶ恐竜、踏みつけてくるような種の恐竜であれば、頭蓋に電流を流して同様の行為など困難であっただろう。隙が生まれやすかったアロサウルスだからこそ。そしてもう一度やれと言われれば無理。ウナギじゃないので痺れがきているのもある。
険悪な雰囲気。助けてもらったのに。特に今回役に立たなかったオーガストだが、まだリーダーは俺という自覚が残っている。
「ま、人間なにかひとつくらいは秘密があるもんだよな。聞かねぇよ、いちいち。お前らも俺のことはどうだっていいだろ?」
間に入って仲裁。チーム、というのは好きではないし必要もない。だが、ちょっとくらいは朗らかに生きてたっていいんじゃないか? そんな対応。
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