第4話
「よくお気づきで。説明にすんなり移行できて助かります。それはですね。ここがあなた達のいた世界とはちょっと違う、からですよ」
間に割って入った受付は「まぁまぁ」と宥める。和を乱すとしてどっちかをを撃ち殺してしまってもよかったのだが、これ以上間引いてもメリットはない、と判断した。
なんだか少しずつ賑やかになる場に嫌気がさしてきた黒髪。いや、最初から感じていたけど。この和気藹々とした雰囲気。
壊したくなる。
「ですよ、と言われてもな。違う世界というならいくつも気になることがある。『なぜ銃を渡す』『なぜそこへ持ち込む』『チームとは?』『俺達は今からどうなる』」
矢継ぎ早に問い詰める。本当はもっともっとある。『お前はなんなんだ』とか。だが、自分の中の優先順位に従った。こいつへの興味はそれほどない。
ジェスチャーで落ち着かせながら、受付はひとつ咳払い。
「そんないっぺんに言われても。ひとつずつ説明していきましょうか。『なぜ銃か』『なぜそこへ持ち込む』かについてはまとめちゃいますね。理由は簡単。『わかりやすい』からです」
「全くわからん」
率直な感想を述べる金髪。気づいたらこんなとこで。同じ境遇らしいヤツが頭ブチ抜かれて。んで銃を渡されて。連想ゲームにしても雑すぎる。正解率ゼロを目指してるのでないなら、あまりにも適当すぎる。
そろそろ受付も説明ばかりで飽きてきた。早足で端的に、が今からモットー。
「そして残りの質問もまとめちゃいますか。あなたがた死刑囚は。脂ぎったお金持ち達のビジネスの一端を担っているんですよ」
それこそ、仮面舞踏会みたいな悪趣味なマスクつけて。いや、そんなことはしないけど。そもそもそんな一堂に介してるところは見たことないし。
「ビジネス?」
鋭く、怒気を孕んだ目の黒髪。これが、仕事? なら今目の前で転がっている猫背だった男は、仕事で死んだわけか? とんでもないブラック企業だ。死ぬ形くらい……選べなくて普通か。鼻で笑う。
ご満足いただける解答だったようで。受付もニッコリ。
「そうですよ、あなたがたは強制的に働かされているわけです。刑務所で働いているのとかって見たことあります? それのいち野外活動です。拒否権はありません。だって死刑囚なんだから」
だって死刑囚なんだから。それだけのことをやったのだから。そう言われると、噛みつきそうだった金髪の拳も若干は下がる。
「まぁ納得、いくところもあるかもな」
どうせなにを言っても無駄。受け入れるべきだし、それでいいかもしれない。はるか昔は火炙りとかもあったんだ。銃で一発、というのは充分に温情。優しすぎて涙が出る。羨ましいね、名も知らぬ猫背の人。
ふむ、と理解の早い静かな一団にどうも満足のいかない受付。本当はもうひとりくらい撃ちたかった。
「でもただ殺すための執行人の精神的苦痛も、そして執行されるまでに生かしておく税金も。無駄だと思いません?」
そのために国民からお金として徴収しているわけで。死ぬべき人物を生かすために、なんの罪もない人々に重荷を背負わせる。それはおかしい。いや、そういうものなんだけど。死刑に処す、って裁判で出たらそのまま床が落ちて絞首にすればいいのに。
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