第7話
自分勝手に言葉を並べてられていることに、金髪は若干の不満を覚えつつも自らは動きたくない。面倒だし。
「知るか。もうどうでもいいだろ。どうせ死ぬんだから」
それにこれ。なんで死体の世話までしなきゃならない。これが同じ幼稚園からの幼馴染、とか、初恋の人でしたとかならわからんでもない。だが実際は、治安の悪そうなところで治安の悪そうな仲間と治安の悪い行為を繰り返してきただろう輩。ちょっと言い過ぎか?
女性は全面的に同意。ムカつくけどそこの意見は一致した。
「銃、どうしようかな。持ってっていいのかな」
受付の人みたいに外に。行っていいのかな。待ってたほうがいいのかな。流されやすい性格なのかも。今更気づく。死ぬ前に。
「もらっておけよ。俺は持っていく。どうせどこかからスナイパーかなんかが狙ってて。俺らが逃げ回るのを楽しんでるんだろ。趣味の悪い」
もういっそ、このコンテナごと爆発して燃えてしまえば楽なのに。それとも拳銃で頭を撃ち抜こうか、そいつみたいに。そんなことを金髪は考える。だが最後にひと花咲かせてやろうかな、とも。
二人の視線が自分に向けられている。それはとても居心地の悪いもので。
「俺は……なにをされても文句は言えないことをやってきた。それならそれでいい。最後は流されてみようと思う」
その結果が死であっても。受け入れるべきことで。ならその身は適当に。存分に操られてやろう。
「決まりだな。だがチームだなんだと言ってたが、そんなものはない。好きにやるぞ。リーダーは俺な。ついて行くくらいなら俺が先頭に立つ」
かたや、金髪は受付に反発しつつも、銃を手にしてから少しずつワクワクとした感情も生まれてきた。開き直ったとも言える。
そして最初からなにに対しても女性は特に興味を示さない。欠伸をして適当に肯定。
「いいよ別に。私は真ん中? RPGなら回復役、みたいな?」
いや、白魔道士は何番目くらいを歩くのだろう。最後尾、は後ろから襲われたら危ないし。やっぱ真ん中? 肉体労働は嫌いだし。
少しずつ、必要のないまとまり感を帯び始めた一行。そこで金髪からアイディアが生まれる。
「最後に名前だけ決めておくか? 死体を見つけたら埋めて名前くらいは書いておいてやるよ」
呼びづらいし。それくらいは結束してもいいだろう。結束、というほどかは微妙だが。出会って数分でもそれくらいしてもバチは当たらない。当たらない? 当たるべきだろう、俺は。
ボケッと薄暗い天井を見つめながら女性はボソリと、
「私は……アデレイド。なんでもいいなら、好きなものから」
そう溢した。ふと思い浮かんだものがそれ。でもそれがなんなのか。誰も知らなくていい。
「オーストラリア人の女優、アデレイド・クレメンスからか? 中々渋いところから選ぶ」
「……」
しかし金髪から当てられてアデレイドは頬を膨らませる。やっぱり嫌い。この人。
なんだか加わらないといけない気がして黒髪は、
「あんたは?」
と金髪に振る。もうなんでもいい。呼ぶことなどない気もする。
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