第8話
少し悩む素振りをしつつも、金髪はアデレイドを眺めて決意。その決め方、いいな。
「じゃあ俺も俳優から。オーガスト。誰なのかはあとで検索でもしてくれ。生きて帰れたらな」
ジョン・マクレーンと悩んだが、やはりカナダのオーガスト・シェレンバーグを選びたい。中々正解には辿りつかないだろう。「最後はあんただNo.17」と、締めは譲る。こいつもこの流れだと俳優からか?
その期待に漏れず、黒髪も頭に浮かんだ俳優。理由はわからない。パッと出てきただけだから。
「俺は……エリオット、でいい」
当てるつもりだったオーガストは肩透かしをくったことに。思い当たるものがポコポコ浮かぶ。
「また候補が多そうな名前だ。じゃ、行くか」
軽くストレッチをして体をほぐす。数日間のサバイバルとか。そうなったら面白い。撮影してるってのなら、ギャラはもらえるのか。もらったところで使い道は、使える時間とかはあるのか。
「あんた楽しんでない?」
凝視するアデレイドの目は冷ややか。なにをやる気なんか出しちゃって。適当に散歩でもしてたら死ぬようにできてるんだろう。そんなに気合い入れても空回りするだけ。
ドアに手を伸ばしたオーガスト。口角が上がる。
「そりゃそうだろ、誰になにも期待されていない。最高だ」
そして開けたドアの先に見えたもの。目に飛び込んできたもの。
と、目が合う。
「……は?」
そんな素っ頓狂な声がオーガストから出た。さっきまでは『ターミネーター2』のBGMが頭に流れてて。もしくは『ミッション・インポッシブル』的な音楽が脳を痺れさせていて。それなのに。
今は真っ白。
「えーと……?」
瞬き多めに今の状況を理解しようとする。一旦。一旦落ち着くためにドアを閉め、深呼吸。二回三回。まだ寝ぼけてるのかな。
「? なに? どうしたの?」
勢いよく出て行くかと思ったのに。アデレイドは若干不満そうに、仕切り直そうとしている姿に問いかけた。
うーん、と腕を組んだオーガストは難しい顔で逆に尋ねる。
「エリオットさんよぉ、撮影って言ってたよな?」
あの受付係。どこかに行ったヤツ。撮影。つまりカメラとか使ってそういう。
その態度に疑問を感じながらもエリオットは肯定する。
「言っていたな。それがどうした?」
「遠くからスナイパーに狙われてたり、食糧がなくて餓死していくもんだと思うよな?」
少なくともオーガストが自分の頭ではそのあたりを思いつくので限界。他にはイカダを作って海を漂ってるうちに嵐に巻き込まれるとか。
なんだか妙な雰囲気を感じ取りつつも、エリオットはそれを認める。
「まぁ、な。それ以外だったか?」
「死ぬのが怖くなった?」
いい気味、と余裕を持ってアデレイドはオーガストの表情を覗き込む。
先ほどまでなら怒りつつ、それを払いのけていただろうオーガストだが、鼻息荒く事態を把握しようとしているため、そんなことに集中を割けない。
……まて。待てマテまて。疲れてる……のはあるかもしれない。もしかしたらここに来るまで、寝てる間に薬でも盛られたのかもしれない。そうか、それに違いな——
という思考と同時に。
ドゴッ、という鈍い音と共にコンテナに衝撃。
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