第114話

 まさか本当に来るとは思わなかったその仮想パレードにしか見えない集団を見て皮肉の一つでも言いたくなってしまいますよ。

「おや? 龍に連れ歩くには見合わない金魚のフンも引き連れてきてしまいましたか」

 半笑いで言うと何人かの老練の男が見をこわばらせて耐えるような動きをするから、そんなプライドがあるなら、自分たちのスタンスの矛盾になにか意見はないのか? と、また罵倒を私の喉からひねり出そうとしてみる途中で彼らをおまけにしてしまう最大級の戦力たる魔法使いの彼女から、不思議そうな声で首をかしげられる。

「では……私はクソを垂れ流す鉢の中の金魚ですか?」

 苦笑させてくれるなぁ。

 面白いのはその半袖ミニスカートの改造メイド服を私服にするセンスだけにしてほしいよ。

「まさか、龍と言って差し支えない強大なるフェリア妃を過小評価できるほど私は盲目ではありませんよ」

「コルネイユ爵……いや、コルネリア子爵って言った方がいいんだっけ? 私達のとこの親衛隊も私にできない仕事をさせるためにきたのだから、居られないと困るのは私なのよ?」

「貴方を監視して、暇さえあれば脚を引っ張ることがか?」

「そういう言い方は、ちょっと……あれよ?」

 派手な服で剣一本越しに下げただけの彼女はまるで怒る様子はないが……あまりしつこく言って怒らせても良いことは一つもないし、これくらいにしておくか、次で最後だ。

「あれ? 問題が有るという意図での『あれ』という意味でしたら、……今晩の戦場で無駄死にされる方が問題ですから……えぇ、ハッキリいいますよ」

 しっかり伸ばした背筋に怒りを込めて真剣に向き合って言っておく。

「今回の戦闘は余裕がないので戦力に貢献する気がないなら消えてもらえますか? でなければ、あなた達の王より与えられた任務を誠実かつ厳粛にこなしてもらいたいものですよ」

 ありえない改造メイド服をファッションかなんかのつもりで着こなす王妃は振り返り、彼らに意見を求める。

「なんて言ったら良いですか?」

「コルネリア嬢は我々が足手まといだと言いたいようですが……?」

「……? 事実よね」

 王妃越しに老練の鎧をまとった兵士が言うと、驚いた王妃が口をこぼす。

 このおじいさんはこっちまで睨んできたので、王妃との険悪な関係にまとめられたくないよ。意見の舵を切らせてもらおう。

「防衛ラインを固める側にいるべき実力かな、あっちの現場は数で止めて、この遊撃隊を動かす方針になっているのだから……私は貴方のところの王妃ほど足手まといとは思っていないけど、持ち場はそこじゃないとおもっているだけね。わ、私はこれでも『適材適所を逸してまであなた達は死ぬべきか? いや、そうじゃない。生きて果たすべき責務があるはずだろう?』と聞いているつもりなんですよ……!?」

 無言で睨む目が悩む目になってすぐに睨む目に戻る。

「勇者因子移植者や、魔法使いが別格なだけよ。連邦の聖騎士隊ですらこの戦場では遊撃隊には不足で……ね」

「聖騎士隊も教導会の指揮する防衛ライン側に下ったのですか?」

「えぇ、そうよ。だから、あなた達タニスの国王直属の親衛隊と連邦で扱いに差をつけると……困るのよ。わかるでしょ? ここは、……それに監視しているのも迷惑なのは仕方がないとわかっていても、それが腹立たしいのも事実なのよ。そういう理由があれば絶対に近寄らせないってこと。わかるでしょう? これ以上は、あなた達にお願いすることしかできないけど、遊撃軍側は王妃だけに頼めるかしら」

 悩むな。すぐに折れてくれ、じゃなきゃ、お前ら悲惨な目にあうぞ……? 頼む、考えているなら、部下の命を預かってるなら……遊撃隊にはこないでくれ……!

「ぅ、んむぅ……仕方がありませんね。わかりました。我々は…………下がります」

「おねがいしますよ」

 よし、そのまま下がれ、なんか遠視の魔術仕掛けたがどうせ後で破壊されるぞ。まぁ、それくらい今は見逃すからこっちに向けた背中をそのまま向けたまま遠ざかるんだ……!

「魔法使いとか、勇者因子移植した魔剣使いとかでもないのにそれら全部まとめてヒックリ返せるくらい強いコルネリアちゃんってなんなのだろうね?」

 この大道芸人みたいなメイド服の女、自分のところの兵士たちの背中が見えなくなる前に遠視の魔術を力技で破壊しやがった!

「他人事ですね。あなたと同じ例外ですよ。日常生活に自分の魔力で負荷かけてますし」

「私はこれでも魔法使いよ?」

「魔法使いじゃかったとしてもあんたは強いだろ」

 こんな最前線にきているけどこいつ王妃なんだよな……。お前のほうがよっぽど例外だろうが……!

「日常に負荷って、常に腕に力を入れているみたいな感じ?」

「たぶん、近い感じです。それに、今回は私も魔剣をもってますから、全力で戦ってもある程度被害を抑えられます!」

 腰の留め金にひっかけたそれを外して見せると、目を凝らされてその切っ先が有るべき場所へ腕を行き来させてなにもないことを確認される。そうだ、この剣はまだつかだけで刀身が無いのだ。

「なに、それ、柄?」

「あぁ、このままじゃゴミにしか見えませんね。これは刀身を生やして」

 魔力を込めて、柄の中にある魔力を増殖、魔術的な仕掛けを動かして、魔力の操作の発展で、細やかな葉脈と枝を広げた大木を一本の剣に込めるように細やかに敷き詰めた金属の先から、

「木の葉のようにちょっとこう……切り離して、鉄の刃をこう、ナイフが作れる」

「なるほど、自在に変形する刀身ね。コルネリアちゃん、よく剣を投げ捨てて攻撃してたもんね。ちぎれるナイフは戦闘スタイルとも合っているのかなぁ」

「いやいやいや! あれは剣がすぐ割れるから使い道ないくず鉄を投げ捨ててるだけで、投げナイフとは違うからね!?」

「そう……かしら、そうね。そう……うん、そんな魔剣どこで買ったの? あぁ、いや、考えるまでもないわね。貴女の妹が囲っている職人の誰かの傑作かなにかよね」

 買って……いや、これは

「……? いや、弟がエイデルハルトを殺したときに奪った」

「大丈夫なの……それ、色々と、貴方が持っていたらダメなやつなんじゃ」

「聖剣説があるから、一応、公国の独立後に返還する予定だけど、『まだ貴方がもってる方が安全』って言われたから保留中よ。なんか、由来はあるみたい」

「なるほど、そのままで大丈夫じゃないのね。だけど、そのままにしているわけでもないと」

「でもこれって――」


 「グニシア様より遊撃隊に伝令であります!」

「なんだ!」

「プロギュス公国義勇軍と傭兵団が旧プロギュス解放戦線とここより南東の山岳地帯ライン川沿い運河にて交戦を開始! 解放戦線側にはコンクエスターの魔法使いが合流しているとみられ、合流は困難と考えられえます! また、予言では残り1時間以内にコンクエスターの越界が見込まれ、防衛ラインの規模減少は見込まれますが、教導会はラインの縮小は行わない方針となります!」

 若い騎士の少年か、……緊張しているおかげで誠実そうに感じれるいい顔だ。

 私もこういう真面目な部下との話し合いは未だに慣れが足りない。

 普段のように騎士の敬礼から一息遅れた緩慢な敬礼を堂々と偉そうな態度と表情でごまかす癖を彼のような私と年の近い伝令兵にも取ってしまいまた緊張させてしまう。こんな悪癖が、日々、酷くなっていく。

「苦労をかけたな。戦闘が始まる前に引き返しなさい。我々は既に戦闘準備態勢を維持しているとも伝えてくれ」

「はっ!」

 私より年上の若い兵士がビシッと素早い敬礼を決めると今乗ってきた馬にまたがり、防衛ライン側の本陣へ戻っていく、

「ゼフテロは合流できないか……、アンタら的にはどうなんだ? グニシアの予言任せで不満とかかなり言いそうな男は」

「まさか、フライハルト様のことを言っているのか? …………」

 押し黙る。まさかもなにも

「当然だろう。あいつは何でもかんでも自分で決めたがるタイプだと思っていたが」

「そう言われたら否定はしないしできないが、不遜な物言いはよしてくれないか? 一応、フライハルト様も問題がなければ、何も言わない」

 フェリア王妃……私やシグフレドの野郎でも勝てないこのバケモンを超えた超生命体が、言うことを聞いているほどの傑物たるタニスのフライハルト王にはあまり良い印象がないが、

「すまない。流石に気安い言い方過ぎた。反省する」

 それだけ言って頭をしっかりと下げておいた。

「あぁ、頭を上げていっ……おい! 空に」

 見上げるとすこし離れた何もない空から巨大な塊が中に浮きながら姿を現す。

 その強大な塊が全身にハリネズミのような砲台を様々取り押さえているのに気づいたのは、加速を始めたときにその全身の穴の一部から光と熱を放つ筒状の矢じりを飛ばした時だ。


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