ドMバーサクのノビタさん――――スライムに窒息させられてマゾに目覚めた最凶探索者はダンジョンの悪意すべて食らい尽くす

みそカツぱん

スライムの洞窟に放置されるノビタ

第1話





伸田のびたのクセに生意気だぞっ!」

「そうだそうだぁ」

「もがもがっ!」


ボクは伸田颯天のびたはやて小学6年生。イジメられっ子です。


クラスメイトのジャイアンとスネ夫(あだ名)に捕まってガムテープでぐるぐる巻きにされてマンガみたいに運ばれている最中です。


こんな目にあっている理由はボクがたまたまテストでジャイアンより高い点数を取ったから。多分それはただの口実でただボクをイジめたいだけなのだろう。


「っっ!!?(ぎゃあぁぁぁっ、いてえぇぇぇっ!!)」

「「ぎゃははははははっ!!」」


ドカリッと乱暴に僕が下ろされた先はだった。


「お前はこれから大量のスライムたちに纏わりつかれるんだ」

「そうだぞぉ。あいつらは人間の毛が大好物だからなっ」

「ふがっ!!?」

「「だはははははっ!!」」


スライムダンジョン。子供だけでも入ることができる数少ないダンジョンが近所にある。

このダンジョンは洞窟型。少し薄暗い程度だが明かりを灯さなくても近くを見通すことができる。


「あ~面白かった」

「そろそろ飽きたな。スネ夫の家でゲームやろうぜ」


ミノムシ状態で動けないのをいいことにこいつらはボクを蹴りまくった。


「こいつは?」

「このまま放置でいいんじゃね? 夜には見回りが来るし」

「ん"ん"っ~~~~!?」

「「ぎゃはははははっ!!!」」


ここまでした挙句の果てにこいつらはボクをここに放置するつもりなのだという。


確かにスライムは人にケガをさせないことで有名なモンスターだ。だからここには子供だけでも入ることができた。


それでもこの状態で放置するのは危ないと思うんだけど!?


ガムテープを全身にガチガチに固められ放置された僕。なんとか外そうともがくも、外れる気配はない。


「ふぐっ…………っ……ずっ――――」


口がガムテープで塞がっている状態で涙が出てきた。本来ならば思い切り泣きたいところなんだけど息が苦しい。興奮するほどに窒息しそうになり、涙があふれる。


顔面は酷い有様だった。涙と鼻水でぐちょぐちょ。顔は真っ赤だろう。そのおかげか――――


「ぷはっ!!」


口に張り付いたガムテープだけはなんとか剥がすことができた。


「……流石にこれだけ泣けば落ち着いたよ」


今はイモムシ状態でまともに動くことができない。できるのはせいぜい転がることくらいだ。


それにここにくるまでに何段もの階段があった。がんばってここから脱出しようとするのは危険だ。それに疲れて体にあまり力が入らない、だから動かずに助けを待つ。


なんの変化もなく時間だけが過ぎる。




「……っ。いつの間にか寝てしまった……? それに体が少し濡れている……?」


もしかしてスライムが体に貼りついているのか?


しかしなにかが体を這っている感じはしない。ただの汗か?


それにしても間抜けだ。ボクはいつでもどこでもすぐ寝れる特技を持っているけどこんな状況でも寝てしまうだなんて……。


「……出た」


今度は心配になってあたりを見渡すと、ゆっくりと這い寄ってくる1体のスライムが見えた。


ボクはゴロゴロと転がりながら距離を取る。できるのはこうして時間を稼ぐことくらいだ。


「くっ」


転がった先にまた別のスライムがいた。よく見たら天井や柱にもスライムが張り付いている。このダンジョンはスライムだらけなようだ。


「こうなったら体を使って押しつぶすしか…………ひっ!!?」


にネッチョリとした濡れた感触。


ボクは真上の天井にスライムが張り付いていなかったのは見ていた。つまりボクがゴロゴロと転がっていた時、すでにスライムがまとわりついていたようだ。


「はなれろっ! はな"っっ、……ぐへっれ"っ!!」


あまりの気持ち悪さに怪我することに構わず、地面に首と後頭部を擦り付ける。が、スライムはお構いなしに後頭部に貼り付いたまま。


そして更に追い討ちを掛けるように抵抗する間にゆっくりとだが他のスライムも近寄ってきた。


スライムのサイズは手のひらと同じくらいの小ささ。それらがゾロゾロと僕の顔を目掛けてやってくる。


怖い。途轍もなく怖い。


そしてよりによってスライムたちが目指すのは僕の頭部。もがくもあまりに多くのスライムの大群を前に呑まれてしまう。


「…………ぐぶっぱっ!!」


スライムの海で溺れそうになること数度。必死で呼吸を確保する。


顔に群がったスライムは顔を覆い。目や耳、口や鼻にまで侵入しようとする。


スライムのどこが危険のないモンスターなんだ!? この抵抗もいつまで続くのかわからない。




「…………。…………?」


――――いつの間にか気を失っていたようだ。不思議なことにボクは生きているし、スライムたちはいない。


しかし体に違和感がある。体中ドロドロなのに、どことなく体が軽くスッキリとした爽やかさがある。


ボクは夜中、巡回の人によって保護された。


すぐに警察が動き、近隣に設置されていた監視カメラの映像が決め手となり、ジャイアンとスネ夫が逮捕された。


入院中に警察、両親、学校の先生など色々な大人が僕を訪ねてきた。ボクはその間、上の空なことが度々あった。


精密検査も受けた。その結果、2つの体の異常と『スキル』を1つ獲得していることが分かった。

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