第12話
「D級ダンジョン『トカゲの塒』アタック開始よ」
「「「おー」」」
カツさんの音頭でボクたちの気持ちは盛り上がる。初めてのD級ダンジョンだ。
これはボクが中学に上がったお祝いも兼ねている。
D級ダンジョンは管理局への書類申請と同行者の条件さえクリアすればE級探索者でも入ることができる。
ここにいるのはD級免許を持っているカツさんとミネさん。それとボクとマユだ。
「ノビタくんもマユも最近じゃ物足りなそうだったからね。ミネさんに付き合ってもらって、今日は追い込んでいくから」
「えーっ? ミネさん危なそうだったらすぐ助けてよね。かーさんは加減を知らないから」
「大丈夫大丈夫」
「カツさん、ミネさん改めて今日はよろしくお願いします」
「相変わらず堅いわねー」
マユに対してはお互いに遠慮はないんだけど。大人の人相手だとどうしてもね。
ボクはこのアタックをかなり楽しみにしていた。久々に楽しめそうだからだ。本当ならば死ぬギリギリまで楽しみたいくらいなのだけど、許される限り全力で楽しみたいと思う。
このダンジョンは湿地のような場所だ。ぽつぽつと低い木が生えているが見通しが効き、草ばかりでたまにゴロゴロと大きな岩が転がっている。そして気を付けないといけないのがところどころ濡れたぬかるんだ地面。足を踏み込もうとして滑ってしまえば大きな隙を作ってしまう。
「うわあああっ!」
「よしっ、ノビタ! よく止めた」
自分よりも1メートル近く背の高いオークの振り下ろしを避け、そのあとの横薙ぎの出始めを盾で潰すように受け止める。ボクは吹き飛ばされながらも、その隙に他のメンバーがオークを囲みタコ殴りにする。
今回のために盾を用意した。元々ミネさんが敵を足止めするタンクをするつもりだったんだけど、ボクもタンクをやってみると言うとミネさんがフォローに回るということになったのだ。
ミネさんいわく、タンクはひたすら根性らしい。痛みに耐え、人間を遥かに超えた力のモンスターに立ち向かう。
なんてボクにぴったりな役割なのだろう。
「ボロボロだけど大丈夫?」
「ポーション飲めば平気です。まだまだいけます」
泥がついた顔でボクは笑って答える。
むしろ気持ちよくなって興奮してます。
マユが気持ち悪いものを見たような顔をしていたから、すぐにはにかんだ笑顔を作った。多分戦闘の興奮で変になってると思われているはず。
これまでにミネさんや他のクランメンバーとも笹山ダンジョンに潜って交流を深めた。
ほとんどの人が気配察知のスキルを持っていなかったから興味を持ってくれたのも大きかった。
この『トカゲの塒』にはボク以外は何度も潜ったことがあるらしい。色々な準備をした上でのD級ダンジョンアタックなのだ。
ボクたちは順調にダンジョンを進んだ。
気配察知はかなり役に立った。障害物越しにモンスターの位置を察知できれば挟み撃ちのリスクをかなり減らすことができるという。索敵の時間短縮は消耗率をうんたらとミネさんはなかなか専門的な話をしてくれた。
もちろん半分くらいしか理解できていない。それはカツさんも同じで、マユは完全に話を聞き流していた。
「ミネさんはいい人なんだけど、ノっちゃうと相手を見ないから」
「はは……」
なるほどオタクって女の人にこういう風に見られるんだね。ボクも気を付けよう。
「あっ」
「大物だな」
みんなで身を屈め、次の獲物を見つめる。このダンジョンの名称にもなっているオオトカゲだ。
その大きさは4メートルほど。前に動物園で見たワニを思い出した。
「あれ、ホントに倒せる?」
「みんなステータスを見てくれ。たしかあいつの筋力が25外皮が12程度だったはずだ。各得意分野で対抗できるか教えてくれ」
「わたしは筋力は9だけど瞬発力が13よ。小さいけどダメージは通るはずね」
「ボクは攻撃力に関するステータスは8程度ですが、外皮14体力17瞬発力11持久力が16です。囮に専念すれば前線に立ち続けられるはずです」
「……そのステータスを聞くとノビタは相当だな。で、マユはどうだ?」
ミネさんの問いに答えにくそうな顔をしながらマユは小さく声を出した。
「……かーさんよりも低いわ。多分あたしじゃ、あいつにダメージが通らない」
「決を採ろう。多分倒せないが戦ってみたいかどうかだ。ちなみに逃げるのは割と簡単だ。岩の上に登れば登ってこれないし、見た目と違ってバテやすい。戦うときはダメージよりもバテさせるのが狙いだな」
「その様子じゃミネさんはすごい戦いたそうじゃない。あたしは役に立たないから逃げ回ることしかできないけど」
「マユはそんな役割でいいの?」
「……いいわよ。帰りはみんながへばってる横で活躍してやるんだから」
「ノビタくんが入ってこんなにもあんたが変わるなんて驚いたわ」
「こいつは関係ないでしょっ!」
どうやら戦うということでまとまった。
しかし結果はボロ負け。倍以上の筋力の前には勝てなかったよ。
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