第11話
「ノビタ、あんたがモンスターを釣り出して一緒に狩りをするわよ」
「……わかった」
それじゃあ気配察知スキルをなかなか覚えないじゃん、という言葉は飲み込んでマユの提案に従うことにする。
ボクはマユを鍛えるために笹山ダンジョンに来ている。マユと2人で潜るのはこれで4回目だ。
「せいっ!」
「「グゲッ!?」」
長さを活かした大きく弧を描く横薙ぎでゴブリンたちが吹き飛ばされる。
マユとカツさんは薙刀を使う。とはいっても僕たち低級探索者で刃のついている武器を使う人はほとんどいない。これは非金属の模造刀、刃こそないもののかなり硬く丈夫だ。
いくら刃が付いていないとはいえ、ただの長い棒と違う。刃の部分が重いと威力が出るし、先端の反りは横薙ぎの際に引っかかりづらくなるらしい。
ボクが手助けするまでもなく、マユは迫りくるゴブリンたちに対処していた。しかも少しだが余裕もある。
「どうよっ」
「すごいね」
「ふふん」
なるほど、マユは戦闘で自信があるようだ。
ボクが入るまではアスパラ会の中では唯一の若年者だった。だから同じ若年者のボクに自慢したいということだろう。
ボクの短い賛辞でも満足したようだ。
「それにしてもあんたの戦い方ってメチャクチャね」
「いきなりどうしたの?」
何回もダンジョンに潜るとマユに対しては気づかいする必要がないように思えてきて、話し方はかなり砕けたものになった。
「だってあんたダンジョンの中なのに普段着じゃないっ!」
「ああ。いつもこれだから」
「最初見た時怒ったけど、今考えると馬鹿らしくなったわ」
「そりゃあ。ここのモンスターじゃボクの外皮ほとんど貫けないしね」
マユは早いスパンでボクをこの笹山ダンジョンに誘った。だから言葉遣いもだけど戦闘服も着てくるのもめんどくさくなってこうなった。
流石にマユの目の前で抜刀をする気はないけど、トイレと言って隠れて抜刀したことは何度かあった。
それがなかなか興奮した。これってシチュエーション効果ってやつ?
マユは外皮の厚さもそうだけど、素手でモンスターを倒すことも非常識と言ってたけど話半分で聞いている。
「でもようやく気配察知が生えてきたわ。もっと鍛え上げるんだから」
「ガンバレー」
「棒読みじゃないっ!」
マユとボクとの関係は男女のドキドキはほとんどない。
セクシーさはママさんのカツさんのほうがあるし、マユは出来と口の悪い姉のようなキャラだ。
これでも成績はそこそこいいからダンジョンに潜れてお小遣いを稼げているというのだから驚きだが。
一方でマユはボクを困った弟のように見ていると思う。これがきっとボクたちにとって安定した関係なのだろう。
「ノビタっ! 勝負だ!」
「ん?」
あまり馴染みのない同級生がボクに勝負を仕掛けてきた。
勝負ってなにをするの? と思っているとどうやら内容はどちらが探索者として強いかということらしい。
このあたりでボクが入れてモンスターが最も強いのは笹山ダンジョン。
やる前から勝負の結果は見えていた。
「バケモノだぁー!!?」
「助けてあげたのに失礼じゃない?」
「「「グルルルルルルゥゥゥゥゥ」」」
同級生くんはE級探索者ですらなかった。勢いよくダンジョンを進むも案の定、ウルフに囲まれた。
そんな状況で動けないところをボクが間に入り庇ったのだけどこの言われよう。まぁ、全く痛くないんだけどね。
いつものようにウルフたちは片付けて、腰を抜かしている同級生の前に立ち、顔を覗き込む。
「それで勝負はどうするの?」
「お前なんかに勝てるわけないだろっ!」
うわ~んとマンガみたいに泣きながら彼はダンジョンを出ていった。
「ボクも少し前まではあんな感じだったのかなぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます