第10話
「ガウッ!!」
「きゃっ!?」
「とりゃっ!」
「キャィンッ!」
カツさんたちと笹山ダンジョンを探索しているんだけど、なんか肝試しみたいになってる件について。
「ほんとーに心臓に悪いわ。しかもすぐにフォローに来たってことは、ノビタくんはウルフの接近に気づいてるし」
「こんな感じで気配察知のスキルなんて生えてくるの?」
「数日は掛かるでしょうけど、繰り返せば手に入ると思いますよ」
数回の交代でマユは疲れたと文句を言いながら座り込んでしまった。カツさんの疲れ具合も同じくらい。
「わたしたちは山歩きに慣れていないし、しかもモンスターの気配を探りながら緊張を保ちながらだもの。普段のダンジョンより数倍疲れるわ」
「動き回ったのはせいぜい1時間半なのにね」
「そういうものですか……」
なんかここに最初に来たときは相手に見つかり放題、噛まれ放題だった気がする。血だらけになりながら楽しく暴れてたところを見たらドン引かれるんだろうなぁ。
1人で耳を澄ませながら山を動き回って、失敗したら襲われるんだからそりゃあスキルが生えてくるのも早いよね。
「まぁ、ボクは毎日ここに潜ってますから2人との差はそこだけですよ」
「毎日っ!? ……あんた、天才じゃなくて野生児じゃない」
「う~ん。案外マユの言葉がしっくりくるわ」
僕だけ余裕がある状態だと女の人って結託するようになるのかな? この母娘の会話ところどころ不思議なんだよなぁ。
「探索はこの辺にして入り口に戻りましょう」
「わかったわ」
「はい」
無理をしないのが探索の基本。それに今日は『調合』を見せるのも目的だ。
「————最後は2種類の薬草を煮出してろ過したものを混ぜ合わせて完成です」
ダンジョンを入ったすぐのところは何もない広場になっている。しかしダンジョンの中。外との違いは魔力に溢れていること。調合をここで行うのが定番と言われている。
「ところどころ気になるところがあったわ。薬草を一緒に煮ちゃダメなのかしら?」
「調合スキルが上がるとなんとなくどこを直せば効能が高いポーションを作れるのか分かるようになるんです。同じ低級回復ポーションでも雑に作ったものとさっきのではランクが3つは違いますよ」
薬草を煮るのも魔法で出した水のほうが水道水よりも効能が上がる。
「今作ったノビタくんのポーションはランクがいくつくらいになるの?」
「買い取りに出すと大抵ランク8と言われますね」
「高品質なんてすごいじゃない」
「ランクとか高品質ってなによ?」
「ポーションのランクは5が基準値。8は3つ分効能が高いってことよ」
「へえ」
逆に下は効能があるのがランク3まで。もっともそんなものを買い取りに持ち込むと調合師としての評価が下がってしまうので避けなければならない。
ポーションの買い取りをする薬品センターでは作成した鑑定もできるし、一定量のポーションを卸せばそのランクも後日買取金額と共に明細を受け取ることができる。
一応調合の腕が上がるほどポーションの出来は見分けれるようになったけど、本職のポーション鑑定士よりは精度は落ちる。
「ノビタは他にどんなポーションが作れるの?」
「最近は中級回復ポーション作りを練習しています。それに低級解毒ポーションを何種類かと低級の毒や麻痺ポーションを」
「毒ぅっ!?」
「あら。毒矢や罠を使う人もいるもの、別に不思議ではないわ」
ボクの場合、自分で飲むためなんですけどね。
「じゃあお楽しみの解体を始めるわよ」
「お楽しみ……?」
「はいはい」
前回カツさんと来たときはイノシシを仕留めた。その解体をここで見せてもらった。
普段は肉の買い取りをしてもらえるモンスターは近くの食肉加工センターまで解体せずに背負って運んでいた。でも解体をすればその分軽くなるし、買い取ってもらうにしても高くなる。
「だって食費が浮くじゃない。こんなにうれしいことはないわぁ~」
先日のイノシシの肉はカツさんが、ありがとうと言いながらごっそりと持っていった。
「まあウサギ程度なら楽だし、ちゃっちゃっとやるわよ」
「勉強させてもらいます」
隣でマユがやるのを見ながらボクも解体を始める。
「マユっ! あんたがお手本なんだから雑にやらないっ!」
「うっさいわねー。わかったわよっ」
「血抜きをして、皮を剥いで、内臓を取って……」
ブツブツと小声で確認しながら没頭するように解体をする。横からお叱りを受けながらだけど1羽2羽と数をこなすごとに上達しているのがわかった。
「はじめてにしては上出来よ。じゃあ帰るわよ」
「はい」
「あ~おわったぁー」
「ということで暇があったらマユはここにきてノビタくんに鍛えてもらいなさい」
「うげっ!?」
本当に終始にぎやかな母娘だ。
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