第6話
「まさかと思っていたけど筆記の方が71点だったなんて……」
合格ラインが70点。かなり筆記試験の対策を頑張ったつもりなんだけど、劣等生だったボクにはそれでもギリギリだったようだ。
とはいえ合格は合格だ。
実技試験の後、試験官からは試験の振り返りの話を受けた。
『この中で唯一合格した211番は何も特別ではない。犠牲者を増やさないために、これだけの強さを求めているということだ。しかし行政の意図としてはソロを推奨しているわけではない。申請はしなければならないが免許取得者2名以上と同伴でエントリーダンジョンに潜ることもできる。つまり十分なレベリングも可能だ。めげずに励んでほしい』
それとボクには個別にお言葉があった。
『伸田くん。先程の動きは素晴らしかった。しかしダメージ覚悟の動きはあまり褒められたものではない。なるべく早くチームに入り、安全に戦闘をするを勧める。では活躍を祈る』
試験官に言われたことを思い出し、ボクは首を横に振る。
「ボクにとって安全なんて縁がないものだってよくわかったよ」
今回の試験では安全すぎてほとんど興奮できなかった。
急所を守るプロテクターに防刃繊維が入った戦闘服、それと武器。今まで使ったことのないこれらはモンスターと戦うのを簡単にした。
「もっと苦しくて、痛くて、心が
他人が聞けば正気を疑うようなことを言っている自覚はある。でも追い詰められて興奮が高まったあとの抜刀が気持ちいいんだ。
以前抜刀する直前の顔が気になって鏡で自分の顔を見たことがある。その顔は気持ち悪く、纏う空気ごと歪んで見えるようだった。多分今もそれに近い表情をしているのだろう。
「ああ、そうだ。探索者証をもらったのだからステータスを確認しないとね」
カードの裏側を見ると詳細にボクのデータが書かれていた。
【伸田颯天】 —12歳— —E級— —所属なし―
〈LV〉 5
〈外皮〉 11
〈生命力〉 12
〈体力〉 8
〈筋力〉 3
〈瞬発力〉 3
〈持久力〉 9
〈魔力〉 5
〈知力〉 2
〈精神力〉 10
〈操作力〉 2
〈運〉 2
≪スキル≫ 『苦痛を快楽に』LV3
『マゾ体質』LV3
『回復力強化』LV3
『毒耐性』LV2
『悪食』LV2
『免疫』LV1
『調合』LV3
『拳術』LV3
『初級魔法』LV2
『柔術』LV1
「やっぱりノビタは知力が低いんだな」
「余計なお世話だよ」
ボクがE級探索者になったことは友達の何人かに話すことにした。
「ポーション売って金稼ぐなんてすごいな。調合って難しそうなのにな」
「慣れるまで作るのめんどくさいけど、一定の値段で売れるのがいいところだね」
「ちなみに1本で何円?」
「100mlで1,000円だよ。薬草取ってきて5本くらいまとめて作るんだ。自分でも使うけど」
「無傷で帰ってこれないなら微妙かも……」
「そうだね。どんなに慣れても2時間も回れば大抵ケガはするよ」
「「うげっ」」
ただし調合と拳法、初級魔法以外のスキルは隠した。カードには一部の情報を隠蔽する機能がある。偽装でないのは個人を守ることが目的であって悪用されないため。
「それにしても偏っているよね」
「ん?」
カードを見せた翌日、オタク気味なタイキからステータスのことについて話がしたいと言われた。それでボクはカードを出してタイキの話を聞くことにした。
「カードに表示されるステータスはあくまで元の肉体に掛かる補正値なんだって。レベルが上がるときに戦い方や素養に応じたステータスが上がるらしい。でも低レベルの人がよくSNSでステータスを公開してるんだけど、調べた感じここまで偏った人はいなかったんだ」
「…………」
それってボクがドM攻略してる影響だね、とは言い出せない。
とりあえず心当たりがないなぁという顔で誤魔化しておいた。そんな顔を見抜くようにタイキは疑うような目を向けてくる。
「……まあとにかく、ダンジョンは危険な場所なんだ。気を付けて」
「命が掛かってるからね。無理はしないよ」
嘘を言っているようで心苦しいけど、別の意味で命が掛かっているから止められない。
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