第7話




ダンジョンは不思議だ。モンスターや生えている植物、鉱物は魔力を帯びているため地球上には存在するものでも性質が違い、希少な資源になる。


それに環境だ。温度、湿度、土壌、気圧、太陽の有無。中には石でできた遺跡や中世のような城、コンクリートでできた建築物の内部を進むダンジョンもあるらしい。


資源や宝で人間を招き入れ、喰おうとする何者かの悪意を感じるとタイキが言っていた。そういうお年頃なのか陰謀論が好きらしい。


「ダンジョンは不思議。とは言っても、ボクが1人で来れるのは家の近くの笹山ダンジョンだけなんだ」


文字通りに笹が茂り、木がところどころに生えた山ダンジョン。ここも不人気ダンジョン。獣道のみでとても見通しの悪い環境だからだ。


「ボクにとっては理想的な環境なんだけどね」


前に他の人に助けられたことがあった。ボクが武器を持たず、傷だらけになっていたのを見かねてというやつだ。親切を受けといてなんだけど、ほっといてほしかった。人が少ないというのはそれだけでありがたい。


1人で気配を探りながら山の中を回っていたおかげか『気配察知』というスキルが生えてきた。


スキルが生えてくるといえば、毒を食べるのがマイブームだ。小さい子供が食べると危険なものと調べれば身の周りでも毒はたくさんある。体が痺れて、気持ちよくなりながら抜刀する感覚は何ともいえない。


しかし『毒耐性』は3回でその毒物に対し完全な耐性を得てしまうらしい。スキルというものは致死量さえも凌駕するようだ。


「まったく、早く中学生になりたいもんだよ」


1つ学年が上がれば中学生。今は12月。あと4カ月の辛抱だ。

両親は小学生の間はここよりも離れたダンジョンに潜ることは禁止と言った。手に入る毒を増やしたり違う環境を手に入れるのはもう少し我慢しなければならない。




「ならクランに入ったら?」

「う~ん、それが上手くいく気がしないから困ってるんだよなぁ」


中学からの活動についてどうしようと思い、タイキに相談してみた。


ボクみたいに周りに探索者仲間がいない人間がチームを組むには2種類しかない。ダンジョン会社に入社するかクランに入るかだ。


日本の制度上、ダンジョン会社に入れるのは高校生から。だからクランに入るしかない。


問題はボクの活動のスタイル。つまり抜刀することこそが活動の目的であること。


「まったくカミングアウトできる気がしない」

「なにをカミングアウトするんだい?」

「うわっ!?」


思わず言葉に出してしまっていたようだ。


いきなりボクが驚くからタイキもびっくりしてしまったようだ。


ん? 待てよ?


「タイキは陰キャだし、春には中学も別々になる。なら話しても問題ないのでは?」

「陰キャ仲間のノビタに言われたくないよ。打ち明けようとすることもろくな話じゃなさそうだし、聞きたくない」


ダンジョンに潜り始めてからリスクとリターンの意識と思い切りがついた。言葉にするとアリに思えてきたな。


「タイキ、ボクは実はかなりの変態なんだ」

「いきなりキミは何を言っているんだい!?」


タイキにガッツリ、ボクの性事情とダンジョンに潜る目的を話した。

当たり前だけど人生の中でいちばん他人に引かれたよ。


「いやぁ、持つべきものは話を聞いてくれる友だね」

「3回くらい逃げ出そうとしたけれど、レベルアップした身体能力でボクを捕まえ、押えつけただけじゃないかっ!」

「まあまあ」

「はぁ……つまりノビタの変態性を受け入れてくれるクランを見つけて欲しいんだね?」

「ボクはSNSに疎くてね。そうしてくれると助かるよ」

「そんな変態集団は警察に捕まれ」

「そっ、そんなっ!?」


ボクにとって理想的なクランはネットの情報だけでは見つからないらしい。


「だけど中学生でも入れるクランを探すことには協力する。ただし、クランとのやり取りはキミのスマホを使うからね」


あれ? これってただボクの変態さをバラしただけでは?




翌日。


「ノビタの条件に合うクランが3つ見つかったよ」

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