アスパラ会
第8話
「こんにちは、伸田颯天です」
「今日はうちを選んでくれてありがとね。カツこと
「カツさんって女の人なんですね」
「えへへ。言いやすいでしょ?」
かなり普通の人だ。おそらく40代、うちのママより少し若いくらいかな。
ボクはクランの面談で市内にあるファミレスにいる。
タイキに無理を言ってクランを探してもらったのだけど、その中からメールを送った。ボクが12歳であることがかなりネックになったのか3つのクランのうち1つしかメールでのやりとりが続かなかった。
そして面談をすることになったのがこの『アスパラ会』である。
「ところでなんでアスパラ会って名前になったんですか?」
「それはね。うちらのほとんどが農家だからだよ」
「……なるほど?」
「今の世の中便利なものがいっぱいあって、時期によっては農家は空き時間があるのよ」
クランを選んだ基準はボクの活動範囲(春予定)のクランであること。メンバーがある程度大人で兼業かつ生活力があること。夕方や土日をメインに活動をしていること。
一応タイキに性癖についてカミングアウトした甲斐はあったようだ。彼なりに条件の狙いがあって、大人であれば少年の性の悩みをある程度受け止めてくれるとの期待。それとポーション作成というお金になる能力を持つ未成年を悪用しないであろう人の良さを見たそうだ。
これはボクもブログを読んで活動写真の表情からもそうだと感じた。
「まっ、とりあえず潜ろうか」
カツさんにステータスを見せて(スキルの一部は隠して)ダンジョンでモンスターと戦ったときのことを話したんだけど、それはメールである程度話した内容。
本当の実力とポーション作成の腕はあらかじめダンジョンで見ることは決められていた。
「ところで新調したばっかり?」
「はは……そうなんですよ」
嘘です。試験の時以外プロテクターや戦闘服を着たことがないなんて絶対言うなってタイキに言われました。
武器は棍棒。思った以上に使いやすかったのと手入れがほとんど不要なのでこれにした。ちなみに刃物は探索者免許と別の免許が必要だ。
事前に色々なモンスター相手に棍棒を使う練習をしておいた。
ママ以外の大人の女性がすぐ目の前で着替えるのはドキドキしたな。
ダンジョンの周りには着替える場所はない。だからファミレスには戦闘服のパンツを着ておいて、上着を外で着る。
それはカツさんも同じで、いくら上だけとはいえ目の前で女の人がTシャツだけになるのは目のやり場に困ってしまった。
「準備はOK?」
「はい」
チームを組んでE級以上のダンジョンに入るにはオンラインでの申請をし、10秒間近くの監視カメラの前で確認撮影をしなければならない。
なお、探索者証には位置情報を記録する機能も付いている。なにかあったとき疑われないようにするためにもチームの申請が必要なのだ。
ボクとカツさんはボクのホーム『笹山ダンジョン』に入った。
「カツさん、いました」
「はやっ」
『気配察知』のスキルはレベル3。毎回使っているのですぐにレベルが上がった。
笹山ダンジョンは全3階層。モンスターと言われないと分からないくらい、普通の山にいそうな動物や虫ばかりだ。流石にクマはいない。
「ギャンッ!?」
「えっ、死んだっ!?」
「こんな風にキツネくらいなら投石で仕留められます」
「……思った以上に強いね」
「今はここばかりですから、慣れが大きいですよ」
「今度は近接戦闘を見せて」
「はい」
ボクが先頭でいつものように茂みをかき分けて次の獲物を探す。途中で蛇を仕留めたがこれはただの露払い。
「いました。イノシシです」
「これはここでのいちばんの強敵じゃない?」
ホントに大丈夫という表情でカツさんが聞いてくる。
「大丈夫。何度も倒してますから」
このイノシシくん、最近ますますボクの外皮が硬くなって、攻撃が痛くなくなってしまった。
「たっ!」
イノシシが後ろを向いたところを急襲。イノシシは急な方向転換が苦手だ。
「うりゃっ!!」
「ブオッ!!?」
背中に一発。続いてイノシシが振り向いたところに頭部へ上段からの一撃。
イノシシの頭は大きく揺れ、叫び声さえあまり上げれない。
「よしっ」
攻撃を当てたら左に回りながら、今度は目を狙って横薙ぎ。怯ませながらダメージを蓄積する。
どんどん弱るイノシシ。最初の一撃が上手く入ったから終始ボクのペース。一方的に攻撃を当て続けイノシシを仕留めた。
ぱちぱちぱち。拍手が聞こえた。
「お見事。実力は十分に見せてもらったわ。合格よ。ポーション作りはまたの機会に取っておくわ」
「ありがとうございます。いいところを見せれました」
「ノビタくん、歳の割りにしっかりしてるって言われない?」
「ええっ!!? むしろガキっぽいって言われますよ!?」
「あらら」
今日は撤収。ボクの案内でダンジョンから出ることにした。
「これからよろしくね」
「こちらこそよろしくおねがいします」
「ところでしばらくはここのダンジョンしか入れないのよね?」
「そうなんですよ」
どうやら親との約束の話をカツさんは言っているようだ。
「ならわたしたちがノビタくんに案内してもらおうかしら」
「カツさんの他に誰が来るんですか?」
「わたしの娘よ」
「え?」
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