第三話
一週間後、深夜一時……。
「えっ!? 琴葉とましろって、最近一緒にお昼ご飯食べてるの!?」
結の驚く声が画面の奥から聞こえてきた。
「うん」
琴葉が頷くと、画面の奥から結の羨ましがる声が聞こえた。
「いいなー」
琴葉は、画面の奥を見つめた。
「えっと、それで、結と楓とも一緒にお昼ご飯食べたいなって」
楓はその言葉を聞いて、なんだか少し不安になった。
「……それは、琴葉が言ったの?」
画面の奥から聞こえてくる楓の声は、いつもよりも無機質っぽさが出ていた。
琴葉は、一瞬頭の中にクエッションマークが浮んだ。
「私も一緒に食べたいって思ってたよ。でも、それを最初に言ったのはましろ」
琴葉が特に何も気にしていないように答えると、ましろは画面の前で、静かに首を振った。
「あの時、ほぼ同時だった。私が言わなかったら、琴葉が提案していたと思う」
すると、結がパンと手を叩いた。
「まあ、と、に、か、く! 折角琴葉とましろが提案してくれたんだし、どこかで一度集まろうよ!」
彼女が上手くまとめてその場を閉じようとしていたときだった。
「……私、無理かな?」
画面の奥から、楓の弱そうな声が聞こえてきた。
「楓、どうしたの?」
琴葉の心配そうな声が画面の奥から響いた。
「私、通信クラスだから、普段学校行ってないよ?」
楓はなんだかとても悲しそうだ。
そして三人は楓のその事実を今知ったのだ。
「えっ? あー、そうなんだ。じゃあどうしよう……」
結が珍しく困惑している。
そんなとき、静かな声で助け舟を出したのはましろだった。
「外で集まればいいと思う」
一瞬、そのボイスチャットのルームは静かになった。
三秒後、それを最初に打ち破ったのは結だった。
「あっ、確かに! ましろ、ナイスアイディア!」
琴葉はすぐに、楓に意思確認をした。
「楓、それでいい?」
琴葉の声は、仲間から名案が出てきたことに対して、嬉しさを含んでいた。
「うん。あ、あの……」
楓は肯定しているのかどうか微妙な返事を返した。
「私の家の最寄り駅まで来て欲しいんだ」
楓は、静かに自分の希望を伝えた。
その口調には、恐怖と緊張が混じっている。
「それはいいけど……? なんで?」
結は慎重に彼女に聞いた。
すると、楓からグループの方にチャットが送られてきた。
『私、ずっと外に出てないから電車に乗るのが怖い……』
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