第8話 波乱の種目決め!
ということで意外にササッと実行委員が決まってしまい、話し合いは種目決めへと移った。
私は最初から決めてたんだ!
「種目は、100メートル走と障害物走から一人一つ、選んでもらいます。選択種目は、パン食い競争、大玉転がし、騎馬戦、借り物競走の四つから一つ、選んでください! 一応、第三希望まで決めておいてください」
実行委員長となったかずかずが、今は会を取り仕切っている。
いつになく目をキラキラさせているような?
いつもより命に満ち溢れてるよ!
※満ち溢れてないとおかしいって! 死んじゃうよ。正確には「生命力に満ち溢れている」だよ!
「パン食い競争がいい人ー!」
かずかずの元気な声に、
「はいっっ!!」
と、真っ先に手を挙げる。
競技中に食べられるなんて、こんなサイコーな競技はないっ!!
でも、他にもパンを食べたい男子は多く、あみだくじになってしまった。
よし、絶対にとってやるぅぅ!!!
でも余りものには福があるって言うし、今回は最後まで待ってみようっと!
※「余りもの」じゃなくて「残りもの」だよ!
ということで、最後の余った一番右端のところに名前を書いた。
さっきも実行委員取れたし、きっと当たる!!
かずかずが当選者を確認する。
「当選者は、佐藤さん、松村さん、吉野さん、安武さんです。名前を書きに来てください」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
これ現実じゃないよね? そうだよね? きっと夢だよね?
すごい嫌な夢だぁぁぁ!!!!
「うわぁぁぁああああん!!!」
パン食べたかったのにぃっ!
私のパンが先輩たちによって奪われたぁっ!
悲しいよぉ!!!!
「うわぁぁああああふぐっ」
堪えきれなくなって叫んでいると、大和くんに口を塞がれた。
そしてもう片方のその人差し指を口の前で立てる。
呆れたような表情と小首をかしげる仕草で、こんな状況なのに先輩たちは騒いでいる。
「キャーっ! 町田くん可愛いっ!」
「桜庭さん羨ましい!」
あー、こちらの気持ちも分かっておくれぇ……。
「ははは……今勝ち取ることができなかった生徒は、二巡目まで待ってください」
えええええ⁉⁉
そんなあ……。
ひどい仕打ち!!
やだぁぁぁ!!!!
実行委員やるよりもパン食い競争やりたかった……はぁ。
今回も叫びたかったけど、もとから大和くんに口を塞がれてたせいで、できなかった。
ストレスぅぅ!!!
たまるー!!
そして時間は過ぎ、一巡目は終わった。
今のところ、実行委員の中で決まっているのは智紀だけ。
智紀は100メートル走と騎馬戦に決まった。
100メートル走は足の速さがそのまま生かされるから、合ってると思う。
そして……残っている種目は、借り物競走のみ。
「それでは……僕と秋津、月城、町田、桜庭は借り物競走と言うことでいいですか?」
かずかずが言い、みんなが頷く。
気力がなくなり、顔を覆って仏のように動かなくなった私の分も、智紀が頷いてくれた。
はぁ……借り物か。
※そこは「仏」じゃなくて「銅像」だよ! っていうか銅像になるのは実在した有名人だし!
しかも軽音楽部全員が借り物競走ってどういうこと?
イケダリフォートップなんだから、カッコよく見える騎馬戦とかにすればよかったのに。
実行委員だし。
こう考えたら、実行委員の中で一人だけ種目が違う智紀がかわいそうだ。
ナムナミダムヌ。
※
「はぁぁぁ……よしっ!!」
このまま無念に浸っててもしょうがない! と自分を奮い立たせて、「フンッ!!」と声を出してみる。
うん、元気戻って来たかも!
そうだよね、今回の体育祭は彩里や七羽、莉乃ももちろん参加する。
ユーウツなことばっかりじゃない!
「胡桃ちゃん……ちょっとボリューム下げられるかな?」
それぞれの種目の詳細について話しているかずかずに遠回しに叱られ、しょぼん。
しょうがないからガッツポーズで、気合いを入れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「彩里、種目何になった⁉」
その日の昼休み、私は真っ先に彩里に聞いた。
「いえーい、100メートル走! と、借り物競走! 借り物は実行委員の人の話で、出てくるお題がめっちゃ面白そうだったからわくわくしてる!」
「えっ、そうなの?」
かずかずの話なんて全く気にしてなかったから、知らなかった。
「私は障害物走と大玉転がしだよ。そんなに動かない競技になって良かった! 疲れるの苦手だからさ」
どちらかというと文化部系の七羽は、疲れない種目になったらしい。
七羽の希望の種目になれたのは良かったけど、体育祭、楽しんで欲しいなぁ……。
「私は障害物走とパン食い競争! 実行委員にもなってめっちゃ楽しみ~! パン食べられるとか最高!」
ちょ、莉乃、私の傷をえぐらないで~……。
「グハァーッ!」
シーン……
「ごめんなさい、忘れて」
「もちろん忘れるよ?」
「元気出して、胡桃」
「実行委員なったんだしさ!」
自分たちで私の心に傷を作ったくせに私のことをなぜか励ますみんなだけど。
こういう関係も、こういう話も、悪くないなって改めて思った。
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