第16話 大和くんの様子がおかしい?
第90回花里学園体育祭は、音楽組の圧倒的優勝で幕を閉じた。
月曜日の振り替え休日を挟み、今は火曜日の昼休みだ。
「音楽組が優勝したのは、イケメンが多いからだって噂になってるよ!」
莉乃がそう言う。
え、関係なくない?
「借り物競走、感動的だった……私泣いちゃったよ……」
七羽が言う。
え? あれで泣くの?
「泣いちゃうの、分かるよ……私叫んじゃったもん」
「あの場に一緒に、イケダリフォートップと手繋いでゴールとかさ、マジで運がいいの自覚した方がいいよ?」
「ああ、思い出したら涙が……百航先輩の笑顔、めっちゃくちゃ輝いてた……ああっ」
え、真面目に七羽泣いてるけど……。
周りのクラスメートを見てみると、よくイケダリフォートップのことで騒いでいる女子たちもメレンゲを押さえている。
※泣いてるんだったら、メレンゲじゃなくて目頭だと思うけど……?
「うわああああ感動したあああ」
「それなあああああ」
え? 待って。
男子でさえも大声で泣いてるんだけど⁉
え、そんな感動的だったのっ?
どこが?
※え、分かってないの⁉
「そういえばさー、音楽組は土曜日、演奏会だよね?」
「そうなんだよー……まだ2曲しかマスターできてなくて」
「やるのは何曲なの?」
「5曲……」
「え、ヤバくない?」
一応、前やってた
もう一つ、友情をうたった感動ストーリーの
あとは、明るい恋愛の曲と最近やってるドラマの主題歌、雨についてうたった曲の計5曲なんだよね。
※この説明、全部かずかずの受け売りなんだよね。
「ほら、お弁当食べてやるから行ってこいよ。練習」
またまた隣の席でお昼ご飯を食べていた智紀に言われてしまった。
自分で食べたいだけじゃない?
「あと5日なんでしょ? あと3曲……歌詞を覚えるのなら手伝ってあげられるよ。これでも暗記ものの歴史と生物は得意だから!」
優弥までもがそう言う。
優弥はお弁当を食べるためじゃないみたい。
「優弥、お弁当全部あげるから歌詞覚えるの手伝ってくれない⁉」
「お弁当くれるの⁉ ありがとう!」
あ、お弁当欲しかったんだ。やっぱり。
「時間とか場所とか決めたいから、
ぼーだーは最近連絡手段でめっちゃくちゃ使われてるアプリのこと。
クラス全員が入っているぼーだーグループもできあがってるから、自分の持っているアカウントの番号を表すバーコードを見せたり、逆に自分が読み取ったりしなくても、クラスぼーだーグループからぼーだー追加できるんだよね。
ぼーだー追加をすると、メッセージと通話ができるってやつ。
「もちろんっ。僕はいつでも大丈夫だから、胡桃ちゃんが大丈夫な時にしてね」
「ありがとう、優弥!」
優弥にばっちりお弁当を渡すのを忘れずに、るんるん気分で教室を出る。
別に練習が嫌いってわけじゃないし、むしろ好きなんだよねっ!
バンッ
と音楽準備室のドアを開けると、奇跡的に全員集合っ。
「え、自力で来た……?」
「今までこんなことなかったのに。ホントに胡桃か……? 大丈夫か⁉」
「大丈夫だって!!」
音楽準備室の中には、ドラムの調子を整えている大和くんと、サイクルトレーナーを折りたたんでいる(折りたたみ式だったんだ……)陽ちゃん、珍しくストロベリーホイップフローズンのいちごだけを頬張っているつばっさー、いちご以外のホイップやアイスの部分を食べているかずかずがいた。
「かずかずっ。友達が歌詞覚えるの手伝ってくれることになったから、楽譜全部の曲くれない?」
「……それって、智紀? 男なの? 家に来てやってもらうのか?」
私はかずかずに聞いたのに、なぜか大和くんから聞かれてしまう。
「ちがうよ。智紀の友達~。場所はまだ決まってないけど」
「……セーフだろう。かずくん、いいよって言ってやって……」
「あ……い、いよ?」
なんで大和くんが許可出してるの?
あと何がセーフ?
「はい、これが『サイダー』、これが『triangle story』、これが『レインタウン』ね。できれば今日中に歌詞、覚えて欲しいけど……その、智紀の友達は今日空いてるの?」
「空いてるんじゃない? もし無理だとしても智紀にお願いするよ~。どうせ家にいるから、トツればいいし」
「ともの……⁉」
大和くんにすっごい驚かれたけど、なんでだろ?
「……なんでもない」
ドラムの椅子に座ってため息を吐く大和くん。
いつもと調子が違う気がする……。
「大和くん、大丈夫?」
「大丈夫だから。キニスンナキニスンナ」
え?
絶対大丈夫じゃないやつだよね?
「ほほほほら、胡桃ちゃん。イッツアフレンズ、練習しよ?」
「あ、うん……」
かずかずが気にしないなら大丈夫なのかな?
っていう感じで、いつもと調子が全く違う昼休みだった。
調子狂うよ~~~!!!
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